野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

肩の力を抜いて作曲中/ガチャ・コン音楽祭の打ち合わせ

25絃の新曲を作曲中。9月9日に山本亜美さんにより世界初演。タイトルは決まっていて、《編む 継ぐ む》。作曲家の戸島美喜夫先生の音楽から着想を得て作曲に取りかかっているが、戸島先生への想いが強すぎて、何を書いてもダメな気がして、作曲が難航していた。「継ぐ」の部分で先人への敬意がありすぎるために、肩に力が入ってしまうことはあるのだと思う。ジャワから帰国して間もない頃の佐久間新さんも、ジャワの美学を日本に継ぐ志が強かった。今の佐久間さんは、志は高いのに脱力している。作曲も脱力しないと書けない。「継ぐ」じゃなくて、「編む」の方に気持ちを移す。十和田で出会った「南部裂織」のことを思い出す。古い着物を裂いて織り込んでいく。リサイクル、リユース。捨てられるような物をパッチワークのように編み込んでいくことこそ、ぼくがやりたいことじゃないか。力んでいる場合ではない。ボツになりそうな音も、編み込むことで魅力が増すはずだ。肩の力を抜いて譜面を書いていこう。

 

びわ湖・アーティスツ・みんぐる2022『ガチャ・コン音楽祭vol.2』に向けての打ち合わせ。財団の福本さん、山元さん。コーディネーターの永尾さん、野田さん。そして、7月のワークショップでゲストにお招きし、10月のライブにも関わっていただく予定の柳沢さんと。ベトナムのゴングについて、扱い方からワークショップやパフォーマンスの可能性まで、色々ざっくばらんにお話を伺えた。柳沢さんとの打ち合わせの後は、今年度のプログラムについての会議。気がついたら明日から6月。どんどん決めていかないと。昨年度の記録映像、山城大督さんの映像が公開になった。

 

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打ち合わせ後は、新曲の作曲に戻る。今日は順調に作業が進んだ。山本亜美さんと25絃のことを思って過ごしている。山本亜美さんの演奏を色々聴いて、亜美さんのことを考えるので、作曲中はほとんど片思いのようなストーカーのような感じになるのだが、作曲し終えると、自分の手を離れていく。今度は演奏家が譜面を頼りに作曲家のことをいっぱい想像する。この時差が面白い。今頃は、オルガンの石丸由佳さん、ソプラノの小林沙羅さんが、ぼくが昨年作曲した《たいようオルガン》を練習しているのだろう。6月12日に水戸芸術館、7月2日にりゅーとぴあで再演があるので聴きに行くが、こちらの作品のことは、今は忘れてしまっている。昨年の今頃、熊本に引っ越してきて初めて作曲したのだった。

 

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