野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ビジュツセッシュ

朝、砂連尾さんと佐久間さんが、中国の健康体操「八段錦」をやろうというので、やってみる。身体に無理のないストレッチなので、普段凝り固まっているところが解されて心地よい。今日の十和田市現代美術館での公演《ビジュツセッシュ》の途中で、「八段錦」の時間を持とうと思いつく。構成は、

 

1 壁面のダンスーブエノス・アイレス

2 熱力学の問題行動

3 Toward Body

4 八段錦

5 Echo gema こだま

 

としよう。公演は、事前に申し込んだ人と偶々その場に居合わせた人が混ざった客層。見るつもりのない観客が、途中から最後までパフォーマンスを見て、最後には積極的に参加してくれたり、開館中の美術館で開催したからこその出会いの面白さもあった。

 

公演の冒頭に、《ビジュツセッシュ》というタイトルについても説明した。ワクチン接種にも副反応がある。身体に悪いものを入れることで免疫をつくるのがワクチン接種。美術を接種する時も、時には自分にとって異質すぎて副反応が出る時もある。当たり障りのいいものだけでない、という話。セッシュという文字は、セッション、セッショクなども連想する。接触できない時代の接触について。セッションについて。

 

レアンドロの作品でのダンスは、常に寝転がっての床での踊りなのだが、鏡の反射によって壁面のダンスになる。これだけ寝技だけのダンスもなかなか見られないので面白い。アルゼンチンの作家によるブエノスアイレスというタイトルのインスタレーションなので、タンゴを演奏するのかなぁ、と思ったけど、実際に演奏を始めると、タンゴになるわけでもない。曲調を変えたり、途中、しゃべってみたくなって声を出したりもした。

 

サラセノの作品では、レクチャーを終えた鷲田さんの背中に接触しながらの演奏とかもした。最初は、風船に向けて演奏していたのに、最後には、ペンが描いた軌跡を演奏しながら動きたくなった。三者三様のカオス。飛び入り参加の三姉妹も、いい味を出している。

 

青木千絵さんの作品とサラセノの間を吹きながら走る。本番では、砂連尾さんも一緒になって踊りながら走ってくれる。本番ならではの出来事がいろいろ。

 

八段錦を参加者のみなさんとやるのが、なかなか面白く、その場で思いついて、少しだけ作曲というか演出というかして、面白い動きと音になる。

 

zoomで繋がっているゲストの方々との交流も、面白い。好き勝手やっていることが、伝わったそうだ。zoomのカメラの人(里村さん)の視点を通して、理解するので、その選択されるフィルターが、面白いらしい。zoomの中のナンバさんがノリノリに踊り出した瞬間。参加者の人も積極的にzoomのカメラに向かって行ったり、カメラの担当をどんどんリレー。観客とパフォーマーとスタッフの境界を相互乗り入れにしたかったし、この場で対面している人と遠隔のリモートの人の境界をインタープレイするシーンにしたかったので、この最後のシーンが実現できて嬉しかった。

 

終演後は、市民文化センターに移動し、明日の本番に向けてのリハーサルと照明や段取りの確認。いよいよ明日が千秋楽。