野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

他者と生きるーリスク・病い・死をめぐる人類学

磯野真穂著『他者と生きる リスク・病い・死をめぐる人類学』読了。SNSで友人が紹介していたので、興味を持って購入したのだが、すごい本だった。著者は明確に触れていないが、クライマックスになって、宮野真生子さんという哲学者の論が登場する。宮野さんが癌で亡くなる直前に書いた論考が引用され論じられる。ぼくは、著者の磯野さんとも宮野さんとも面識がないが、略歴を見ると、2019年に宮野さんが他界されていて、2019年に宮野さんと磯野さんの共著の『急に具合が悪くなる』が出版され、2020年に磯野さんは大学の教員を辞めて独立されている。本文では具体的に触れられていないが、おそらく死ぬ間際までの濃密な宮野さんとのコラボレーションの時間が磯野さんにとって濃密な時間だったのではないか?そして、宮野さんの死を受け入れる過程で、磯野さんは、自分自身の人生をどんな濃度の時間で過ごすかについて考えた結果、大学教員を辞め独立する生き方を選択したのではないか?そんなことを想像した。非常に力強い本だった。ぼくも、改めて日々を大切に生きていこうと思った。

 

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