野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

世界凧博物館/共同アトリエsoil

久しぶりの滋賀県。昨日、日野駅のカフェなないろで、『ガチャ・コン音楽祭』の地域コーディネーター”ぐるぐる”による『ぐるぐるカフェ』なる企画が予定されていて、これは完全にメンバーから自発的に出てきた企画。ただ、コロナで実施は見送りになった。でも、今日はtwelveの野田智子さんと今年度の『ガチャ・コン音楽祭』について、振り返ったり、近況について語り合ったりした。丸亀でのNadegata Instant Partyの展示のこと、あいちトリエンナーレのこと(名称は変わったんだっけ)、美術家の島袋道浩くんのこと、などなど。次年度どんな可能性があるのかを考えるための雑談をじっくりして後、実際に近江鉄道に乗って八日市に行き、大凧会館を訪ねた。

 

oodako.net

 

まず、4ヶ月ぶりだが、稲刈りの景色だったのが、一面雪景色になっていて、風景が一変していて驚いた。八日市駅で、『無人駅の音楽会』の集合場所だった場所に行くと、工事中でラジオ局が移転してくるらしい。懐かしさと、変化の兆しの両方を味わう。

 

大凧会館の展示は面白かった。明治時代には畳240畳のサイズの大凧をあげ、1953年には八日市大凧保存会(現在は東近江大凧保存会)ができ、その技術は継承されてきて、2015年まで畳100畳の大凧をあげていたとのこと。展示のビデオで行われていた大凧製作の様子は、大規模な市民参加型アートプロジェクトのようで、まるでNadegata Instant Partyのプロジェクトのようにすら見える。100畳の凧をあげるには、100人が力を合わせなければならない。

 

八日市大凧の展示、福よせ雛の展示、そして日本や世界の凧の展示から成っていたが、凧というのは空にあげるのを前提に作られているが、展示されると、絵画展のようになる。凧揚げというのは、空の展覧会なのか。インドネシアの空で見かけた凧のこと、イギリスでPete Moserがやっていた凧あげフェスティバルに門限ズで参加したこと、2014年の《千住の1010人》で凧があがったシーンのこと、大友良英さんが千住フライングオーケストラとして荒川河川敷で凧をあげていたこと、イギリスの丘の上でHugh Nankivellと凧をあげたこと、島袋道浩くんが自画像の凧を空にあげた作品をつくっていたこと、などが頭の中で思い出される。

 

美術家の藤野裕美子さんに案内してもらって、能登川の共同アトリエsoilを見学。能登川に来ると雪国の度合いが強まる。大道芸人の丸ちぇろさんともお話。藤野さんは100畳の大凧の原画を描かれた経験もおありだった。昨日、滋賀県立美術館で行われたワークショップのために、1日だけの作品展示をされた様子も見せていただく。空間的にもすごく美しく面白く、一日だけはもったいない、と思ったが、ご本人曰く、一日だけだから、展示を完成させることよりも、その場での思いつきで、いろいろな置き方を試せたりした、とのこと。色を重ねるか重ねないかについての興味深いお話は、楽器の音を重ねるのか重ねないかというオーケストレーションの話と似ている。楽器の音をたくさん重ねると、どの楽器も聞こえなくなる。26日の『世界のしょうない音楽祭』でやる曲でも、ギターと十九絃(低音の箏)だけで鳴らす場面があるが、他の音が重なっていないから、その音色が聞こえてきたりする。藤野さんと色や音や空間で遊ぶ企画をやりたい。滋賀県というやたらにホールがたくさん建っていて、どうやって使ってもどこにでもあるホール以上の魅力が感じられない土地で、コンサートホールという無味乾燥な空間も、彼女と何かをすると生かすことができるかも、と思えてきた。

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