野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

世界のしょうないの新曲

『世界のしょうない音楽祭』に向けて、作曲に取り組んでいる。コロナの感染が広がっているので、せっかく作曲したのに中止と言われるんじゃないか、と心配になる。2年前に作曲した《祇園精舎の宿題の》は譜面を書いたけれども上演されなかった。この特殊な編成の楽曲が、自分が生きている間に体験できるだろうか?そして、これから作曲していく譜面も、上演されずにお蔵入りになったら悲しい。コロナの感染が収束に向かい、無事に本番が行えることを祈るばかりだ。

 

新曲は、『世界のしょうない音楽ワークショップ』に基づいて作曲している。ワークショップの中で、短歌のようなものが生まれた。

 

雪積もり時の流れが春を呼び

蕗のとうが芽を出した

この言葉をワークショップでは、4人が分担した。

 

雪積もり:ベル

時の流れが:カリンバ

春を呼び:尺八

蕗のとうが芽を出した:クラリネット

 

この構成を活かして曲の大きな構造をつくることができそうだ。そして、尺八の「春を呼び」のところで、宮城道雄の《春の海》に取り組んでもいいかもと思い、《春の海》の分析をし続けていた。冒頭の部分は《きらきら星》にもなるなぁと意外な組み合わせに気づいたり、映画音楽のジョーズみたいに西洋楽器を加えられるなぁ、などなど。

 

そうしているうちに、菊武先生から《稚児桜》の楽譜が届き、これを見ながら音源を何度も聴き分析。高音、中音、低音と箏の3重奏になっているが、菊武先生のおじいさんが作曲されたのは中音で、その後、低音が加わられ、菊武先生のお父さんが高音を付け加えたらしい。世代を超えて伝わっていく曲。ワークショップで生まれた短歌の「時の流れが」の部分は、世代を超えての《稚児桜》かもしれない。桜は春の花。

 

ということで、明日は、《稚児桜》の楽譜を五線譜に書き換えて、そこに西洋楽器やワークショップ参加者のパートなど追加していく予定。

 

本日は、里村さんの誕生日で、ケーキ屋さんに行ってケーキを買ってお祝いした。ハッピーバースデー。