野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

丸亀の現在/Edison Denisov

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館に、企画展『丸亀での現在』を見に行った。KOSUGE1-16、Nadegata Instant Party、旅するリサーチ・ラボラトリーという3つのアートユニットが出展している。

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美術館での展覧会というと、ひっそりとして静かで動かないイメージがあるが、この展覧会はワイワイ、ガヤガヤという感じの賑やかな展覧会であった。KOSUGE1-16の展示は、文字通り動く展示も印象的だったが、Nadegata Instant Partyの賑やかさは、美術館の展示室を全くの別世界に変えていた。それは、STAY HOMEで家から出ない町の人々の声が重なり合う合唱であり、様々なキャストが登場する演劇であり、カラフルな舞台セットの中で空間的に映像が歌うオペラであった。それぞれの映像ブースには、それぞれの登場人物に由来する物があり、孤立しているはずのそれぞれの家がミックスされ、個々の声を残しながら大家族のオーケストラになる。見えた空間の不思議な形の椅子は、最後に高台にのぼって俯瞰でき、それは、ドローンで俯瞰した横たわる人々の描く文字と対になっていた。旅するリサーチ・ラボラトリーは、KOSUGE1-16とNadegata Instant Partyについてのリサーチを展示にしていた。年表だったり、資料だったり。そして、会場で流れる動画では、旅するリサーチ・ラボラトリーの二人が、延々と2組のアーティストについて語り続けている。昨年Nadegata Instant Partyとオンライントークをした時に、批評の必要性について切実に語っていたので、その願いが少し叶ったかな。たまたま、ぼくがいた時間に、動画では作品と笑いの関係についてのトークをやっていた。話に加わりたくなった。

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短い滞在だったが、よいエネルギーをいただき、四国から本州を経て九州へ。熊本の自宅に戻る。電車の移動中に、Kholopov著『Edison Denisov』(Routledge)を読了。社会主義ソ連の前衛作曲家のデニソフについての本で、単なる自伝ではなく、楽曲の解説や、デニソフの他の作曲家へのコメント、音楽院入学以前の頃のショスタコーヴィッチとの手紙のやりとりなど、デニソフを巡った色々な話の本。個人的には、数学を志したが作曲家になったという点でのみ親近感があり、同世代のロシアの作曲家シュニトケグバイドゥーリナの方が作風的に親近感があるので、デニソフの音楽にそれほど関心がなかった。関心があまりない作曲家について勉強するのもいいか、と思って読んでみると、学ぶところも多く、収穫大だった。モーッアルトとグリンカシューベルトを規範としていた

 

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