野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

アバンギルド/バッハ研究会/きたまりソロダンス

京都に移動。アバンギルドへ。昨年、コロナでライブハウスが大変な中、アバンギルドを守ろうと、Keep UrBANGUILD Projectが開始。様々なアーティストの動画が販売され、売り上げがアバンギルドの収益になるというもの。ぼくと勝野たかしさんとのライブ動画も発売中で全額アバンギルドに入りますので、そして盛り沢山なプログラムなので、ご支援よろしくお願いします。

 

keepurbanguild.bandcamp.com

 

ダンサー/振付家のきたまりさんが、マーラーに取り組む際にお世話になっているという田中宗利さんは、京都大学の哲学科卒業で指揮者/チェリスト劇団ひまわりの俳優という方。午後は、田中さんによるバッハ講座。太田省吾の戯曲《棲家》の中にバッハの《アリオーソ》が何度も登場するので、その背景をお話いただく。田中さんは、とてもわかりやすく、しかし癖のある物言いで、バッハを褒めているんだかディスっているのだか判別不能なくらい愛を持って語る。そして、田中さんと初対面で共演して、バッハの《アリオーソ》をいろいろなバージョンで収録する。

 

その後、きたまりさんと打ち合わせなどして、舞台監督の浜村修司さん、音響の佐藤武紀さん、照明の竹ち代毬也さんと、舞台や照明などの創作をして、本番を迎える。今日の公演は、太田省吾の《棲家》を完全にダンス化したわけではないが、《棲家》と同じように《アリオーソ》が5回登場する構成で1時間のソロダンス公演をしたらどうなるか、という実験だった。実際に《アリオーソ》を2回弾いた後、自由に即興演奏をしたのだが、カンタータの序曲であった《アリオーソ》を2回弾いた後だと、そちらに向かうつもりはなかったが、墓場に足を突っ込み、能の夢幻の世界に誘われていくことになった。いろいろ発見の多い公演だった。きたまりさんは本当に素晴らしいダンサーなので、演奏中、彼女のダンスを見たいのだが、舞台の配置上、ぼくの背後で踊っておられるので、気配や影で彼女のダンスを感じながら演奏した。

 

3月には京都芸術センターで公演するが、その時は、きたまりさんは出演ではなく、演出/振付。公演に向けての準備として、太田省吾の戯曲を毎日音読し、《アリオーソ》の出てくるシーンでピアノを弾く個人稽古を開始しようと思う。自分自身の身体に太田省吾の戯曲を入れた上で、バッハをどう弾くかを見つけていきたいし、戯曲を深く読み込んでいく上で音楽をあぶり出したい。と同時に、《アリオーソ》の原典となるバッハのカンタータ156番の譜面もしっかり読んでみたい。