野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

沖縄県芸2日目

沖縄県立芸大での2日目。

 

奏楽堂のステージの上に、ピアノ、モニターなどをセッティング。美術家の島袋道浩くんがセッティングに関して、指示をしてくれる。単に機能的に机やスピーカーを配置するのではなく、美しいビジュアルになるために、無駄な台は置かない。背景が美しくなるように幕をどうするかを考える、など、美術家ならではの配慮がいっぱいでさすが。

 

14:00-16:00は、日本センチュリー交響楽団との仕事について語り、その後、大学院生たちとのトークセッションになった。民俗芸能のフィールド調査でも、教育でも、地域と関わる参加型アートでも、古典音楽の普及でも、関わること=介入していくことは、迷惑になるかもしれない。しかし、迷惑を恐れて介入を遠慮してしまう忖度は、何も生み出さない。拒絶されないように介入するには、どうしたらいいのか?お互いの了解のもとで、他人の領域に土足で入り込むには、どうしたらいいのか?他人の領域だったところを、自分の領域にもなる当事者性をどう獲得していくのか?それがコミュニケーションであり、創作の大きな境界である。

 

18:00からの公演までの間に、美術の大学院生の展示会場に行く。作曲の大学院生と一緒に行く。美術の院生は、奏楽堂に来たのは入学式と卒業式以外で初めてだと言う。音楽の院生は、美術のギャラリーに入ったのは初めてだと言う。非常に近い音楽の建物と美術の建物の間に見えない境界線がある。その境界線をどうやって超えていくか。

 

作曲の院生たちと話す。島袋くんの娘さんたちが練習している簡単な「スターウォーズ」の譜面を持ってくる。小学生でも弾ける簡単なアレンジ譜。これを大学院生たちと連弾で弾いてみたり、ショパンを弾いてもらって、フルコンのピアノを間近で聴いたりする。

 

18:00-20:00は、島袋くんとのレクチャー。野村くんはピアノが弾けて技術がある上で様々な変なこともするアーティスト、と言う。そして彼自身は、デッサン力もなく、技術がないから、日本のどの芸大にも入れなかった。だから技術がない上で、どのように表現していくかについて、レクチャーをするので、技術がある人には役に立たないかもしれない、と前置きする。実際、彼は、空間をどのように美しく見せるのか、人とどのようにコミュニケーションするのか、など、様々な技術がある。それは、デッサンなど古典的な技術ではないが、より普遍的な技術のようにも思う。そして、彼の技術にかかれば、世界にある何気ない物や人が思いがけない美を放つ。

 

島袋くんと野村でのコラボレーションは、それほど頻繁ではないが、オリンピックのように数年に一度、濃密に行われる。その時々のコラボを振り返るのも面白かった。YouTube配信は1時間で終了。後半は、対面の人だけが見られる秘蔵映像や、ここだけの話、さらには、サプライズのフルーティストの飯島先生との共演なども。

 

ということで皆さん、おつかれさま。写真家の野口里佳さんとも久しぶりにゆっくりいっぱい話せた沖縄の夜。