野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

三本木散歩2日目

午前中、十和田市現代美術館での企画展トーマス・サラセノ展を見る。コンセプトも面白いが、視覚的にもとても美しく、触発される展示。この空間でもパフォーマンスしてみたかったなぁ。

 

問題行動トリオの十和田市現代美術館での公演《三本木散歩》の2日目。9月末に予定していたが、コロナウイルスの感染者が増加したため9月は十和田市現代美術館が休館したため、11月に延期になった。青森県で感染者数が多かったために休館していたわけではない。十和田市現代美術館の場合、来館者の中に県外からの観光客が占める割合が高い。青森県で感染が増えていなくても、大都市圏で感染者が増えると、休館を余儀なくされることもある。東京の美術館が開館していて、十和田が休館している、という事態も起こる。9月に予定していた兵庫県豊岡市での豊岡演劇祭が中止になったのも同じ理由だろう。

 

十和田で9月末に計画していた《三本木散歩》は野外でのパフォーマンスを中心に考えていた。ところが、11月上旬に延期になった。青森県は冬の手前で、9月末のように野外中心は難しい。そこで、散歩の後半は室内で計画した。ところが、昨日も今日もポカポカ陽気で、本当に天候に恵まれた。

 

本日の公演は、昨日とほぼ同じだが、市民の出演者で今日は出られない人が多いので、昨日とは少し違った構成で行った。

 

冒頭は美術館の前庭でのストレッチ。美術館の前は、公演の参加者以外に、通りがかりの犬の散歩、自転車の中学生ほか、いろいろな人が出会う場でもある。ストレッチの場が、徐々にその輪の外に広がり、中学生や通りがかりの親子や修学旅行生など、いろいろな人と交わった。たまたま落ち葉がいっぱい道にあったので、枯葉を踏む合奏もやった。指揮に合わせて枯葉を踏んでいる様子に、中学生が苦笑していた。

 

昨日はヨーコ先生の街案内があったが、今日はヨーコ先生がいない。今日は、問題行動トリオがダンスや音楽で町を案内していく。木と戯れるダンスや音楽だったり、枯葉を舞い上げたり。「枯葉」をケンハモで吹くと、年配の方は口ずさむ。ジャズやシャンソンは、年配の方には身近な音楽だ。

 

金属の野外彫刻をマレットで叩いて演奏し、彫刻の下をくぐりながら響きを楽しんでもらう。昨日同様、道路の蹄鉄に合わせて落ち葉をみんなで並べて、落ち葉でのドローイング。

 

ウマジンを被っての佐久間さんの暴れウマジンの手綱をとり、楽しく散歩。アート広場での草間彌生の彫刻群の中での即興ダンス+音楽。

 

教育会館の外の鉄柱をスティックで奏でて後、2階のホールへ。今日は階段でのパフォーマンスをせずに、ホール内のプログラムに続ける。安斉さんの筆を持ってのペインティングの動作を指揮に、佐久間さんがウマジンダンス。ぼくはペインティングの動作に合わせて演奏。安斉さんの描く動きに合わせ、ぼくが音を出す。ぼくの音を頼りに佐久間さんが踊る三角関係。安斉さんの動きが、どんどん指揮者のように見えてきたのが印象的。

 

砂連尾さんとエミコさんのデュオダンスは、廊下で。観客はホールの中から眺める。廊下を起点にして、階段におりていく際、観客を階段へ誘導。昨日は目撃者が少なかったダンスだったが、今日は見てもらえた。今日も美しいダンスで、ケンハモで共演できて心地よい。

 

休憩時には、昨日同様、館長自らがお茶を振る舞う。十和田市現代美術館の学芸チームは館長以外は女性。ひと昔前の女性がお茶汲みのような男女差別はここにはない。

 

休憩後に、観客参加の音楽コーナーでなんちゃってケチャをやって後、茶碗と声と手拍子で、松本茶舗にいる佐久間さんとリュータローさんとセッション。中継での共演も当たり前になってきた2021年。

 

サクレさんが来られないので、今日は「不在のサクレ」というダンス。砂連尾さんが見えないパートナーと踊る。それに合わせてケンハモを吹いているうちに、2年前に砂連尾さんが死者と踊るダンスをしていたことが脳裏に浮かび、その時のメロディーを忍ばせる。ダンスは様々な不在との共演となった。

 

ドライヤーダンスは、昨日はエネルギッシュになったので、靴下の些細な動きに集中していただけるように丁寧な導入の語りから始めた。ぼくが靴下とドライヤーのダンスをして、途中から砂連尾さんにドライヤーダンスを代わってもらい、佐久間さんも途中から加わり、ぼくはケンハモに移り、観客の方々を指揮して、ケチャも加わった。こんな感じでリアルタイムにクリエーションができるのは、問題行動トリオならでは。

 

最後のトリオでの即興セッションは、いろいろな交流を振り返る即興にもなった。今日は不在の坂本さんの言葉が、ぼくの口から出てくる。ヨーコ先生の歌も変形してパフォーマンスになる。安斉さんの筆の指揮も、昨日の子どものクッションパタパタもパフォーマンスになっていく。経験が蓄積されてパフォーマンスになっていく。ぼくは楽器も演奏したけれども、ぼくも踊り、無音になるところもあった。すると、佐久間さんが声をだす。佐久間さんが野村になったのかもしれない。気がつくと、ぼくは延長コードで波を送っていた。その波は、思ったよりも綺麗な波動となって、聞こえないビートを伝えていく。せっかく「問題行動トリオ」なのだから、他ではできないような体験をしたい。自分自身の中で抑制している問題行動を解放して、素直に遊ぶようにパフォーマンスしたい。

 

終演後は、美術館のカフェでアップルパイとアップティー。せっかく青森にいる間に、りんごを満喫したい。

 

次回は2月。せっかくインタープレイ展なのだから、町を遊び、人々と交わって遊び、ここでしかできないパフォーマンスをしたい。次回が最終回だけれども、今回関わり合いを持った人々との体験を編み込んだインタープレイをしたい。

 

出演の砂連尾さん、佐久間さん、スタッフの中川さん、里村さん、鷲田さん、見留さん、外山さん、そして美術館のスタッフのみなさん、関わっていただいた市民の皆さん、観客の皆さん。本当にお疲れ様でした。また来ます。良いお年を。