野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

西成彦と歩く熊本/橙書店

里村真理さんの立命館大学大学院での恩師である西成彦先生は立命館に勤務する前は、熊本大学に13年勤務していたそうで、今週、熊本大学でレクチャーなどあって、熊本に来られているとのことで、里村さんのセッティングで、西先生と初めてお会いした。場所は、橙書店という素晴らしき本屋+カフェ。

 

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西先生は、本人曰く「話の腰を折るのが得意」、「相手が1喋ったら、10質問する」という方で、いっぱい質問して下さるので、こちらは嬉しく色々喋ってしまう。行政が主催のアートで、行政によって制約が入ったり、歪められたりしないか、というような質問があった。ぼくの活動は、右か左かとか、体制か反体制か、白か黒か、といった単純に炎上したり賛同したりできるような説明しやすい活動ではない。ある意味、複雑に入り組んでいるので、右なのか左なのか両方なのかどちらでもないのか不明な事象だったりする。白なのか黒なのか赤なのか緑なのかグレーなのか、人によって違う捉え方をする。だから、わかりやすく炎上したり検閲されたりすることは皆無だったりする。大相撲を題材にしているから右翼思想なのかとか、共同創作をしているから共産主義かとか、そんな単純な分類にはまるわけもない。単純化された対立構造を無効化し複雑化して、よりカオスに提示していくのが、ぼくだと思う。かつて、片岡祐介が「どさくさ感」と表現したこと。正解があって間違いがあるように聞こえる音楽ではなく、どれも正解のようで、どれも間違いのようで、どさくさ感がある混在する音楽の場づくり。だから、なかなか制約が入ったり、歪められたりしにくい、と答えてみたけど、今、これを書いていて、それだけじゃないよなー、と思う。ぼくの知らないところで、いっぱい戦ってくれて、ぼくがやりたいことができるように頑張って交渉して実現していってくれている人がいっぱいいる。そこに本当に感謝しているし、ぼくの妄想のような言葉を信じて、動いてくれる人がいる。そのおかげだ。感謝だよなーー。西先生とお話するのは、とても面白い。そして、里村さんが西先生に影響を受けていることも感じた。二人の質問してくる感じが、少し似ている。質問するというのは、相手への好奇心の現れだし、勝手にわかった気にならないことでもある。

 

橙書店、素晴らしい本屋で、店主の田尻久子さんもとてもオープンな方。作家のいしいしんじさんの話にもなり、いしいさんが先日、橙書店に来られたそうで、来週から熊本市現代美術館での展示にも参加されるとのこと。ここで、いしいさんの話を聞くとは!

いっぱい本を購入。また来ます!

 

西先生と里村さんと熊本を歩く。西先生と歩くと、現代の熊本と、明治時代にラフカディオ・ハーンが見た風景と、数百年前の風景と、様々な歴史がレイヤーになって重なって感じられるので面白い。そこに見え隠れするメジャーな歴史に現れないマイノリティが、登場人物として顔を表す。こういう散歩も面白い。明後日は、滋賀で散歩をして歌をつくる。いろんな散歩があるな、と感じた。