野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

まつりだ!まつりだー!ついに、ついに、ついに、『アジアだじゃれ音Line音楽祭』

午前中、一瞬の隙をついて、熊本市現代美術館に行き、最終日のテオ・ヤンセン展をクイックで見ようとしたが、コロナ対策で人数制限ありの予約制で、午後4時くらいまで予約がいっぱいで見られず。宇城市不知火美術館のリニューアル準備室の里村真理さんが、現代美術館副館長の岩崎千夏さんにご紹介くださり、色々お話。そこで、熊本市現代美術館で、相撲生人形の展示をしたことがあり収蔵品になっているとのこと。面白い。

 

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さて、今年度の前半、ずっと準備してきた『アジアだじゃれ音Line音楽祭』を、本日、実施。15時から19時までの4時間の催しだったけれども、その間に、小さなプログラムが次々にあって、そして、その中で千住に行ったり、タイに行ったり、インドネシアに行ったり、マレーシアに行ったりして、ついには、香港やイギリスなどからもオンライン上で続々と人が集まってきた。凄い1日だった。終わって6時間くらい経った今も、まだ興奮している。昨年から色々オンラインでやってきたけど、今日はやっぱり大事件だった。すごかった。

 

いろんな交わりを作っていくのは、余計なお節介かもしれない。けれども、ぼくはこういう交わりの場を作ることと、そういう場から生まれてくる音楽に立ち会うことが、本当に好きだ。それがやりたくって、いろんな人を大騒動に巻き込んでいるだけかもしれないが、そうした騒動を楽しんで協力してくれる仲間がいることが何より嬉しく、生きている喜びを感じる。本当にありがとうと言いたい。

 

イベントの詳細は、近々、映像アーカイブが公開される予定なので、ここで詳しく書かないので、そちらを参照してほしい。その代わり、今の実感だけ書きたい。昨年、『千住の1010人 in 2020年』が中止になって以来、対面で実施できるまでコロナの収束を待つのではなく、ぼくらはコロナ禍でリモートでどういう交流ができ、どういう音楽が可能かを実験し続けた。zoomが会議用のツールで、音楽には全く不向きで、音質も悪いし、雑音と判断されて楽器の音が消されるし、時差があって同時に合奏もできないけれども、この環境下でどんな音楽交流が可能かを、積極的に実験し続けた。その結果、最初は居心地が悪く、ストレスが多かったリモート音楽セッションも、どんどん馴染んでいった。音まち事務局のリモートでのイベント配信の能力も、1年前とは比較にならないほどアップしている。頼もしいチームだ。だじゃ研(=だじゃれ音楽研究会)も、今年に入ってからも、リモートでイギリスと交流したり、東南アジアと交流したり、国際交流が続いて、どんどん積極的になっていて素晴らしい。

 

タイ(アナン)とインドネシア(メメット)とマレーシア(チョーグゥワン)の3人のユニークな作曲家を紹介した第1部で、3人のそれぞれの魅力を紹介できたのが嬉しかった。そして、3人がそれぞれ、リモートでのコラボの可能性を探ってくれ、それにだじゃ研が精一杯応えた。これは大きな財産だ。

 

音楽祭と言っても、音楽だけじゃない。ヨードさんが人形をつくる。佐久間新さんが煙や影などを駆使したダンスをする。北澤潤さんとのトークで、日本とジョグジャの間で、これからのアートプロジェクトの可能性のヒントを探った。

 

本当にどうなるのか想像もつかず、ドキドキだった第2部は、磁場が揺らぐような場だった。すごいうねりだった。日本語、英語、インドネシア語タイ語と4ヶ国語で通訳を入れながら、90分の中で50人以上の多国籍の人々とリモートで交流しての音楽体験。カオスな時間を、ナビゲーターとして進行しながら、それぞれのゲストの世界観をシェアする旅。進行しながら、画面をスクロールしながら50人以上の参加者の表情を確認しながら、声、リズム、楽器、指、小鼓のリズム、体操、ダンス、ドローイング指揮などを次々に体験した。少なくともぼくの体感としては、本当に濃い時間で、その感覚が少しでも参加した方やご視聴いただいた方と共有できたら嬉しい。最後にフィードバックの時間、感想を各自でチャットに書き込みながら、声や楽器でも感想を表現する時間。心地よかった。ありがとうが色々な言語で飛び交いながら奏でられる音楽に、涙がこみあげてきた。コロナで、こんなに離れ離れになった我々ふぁ、こうやって色んな国の色んな時間から(イギリスは朝だし、日本は夕方だし、インドネシアやタイはまだ昼間)集まってきて、一緒に時間を過ごして、それぞれの時間に帰っていく。ちょっとだけzoomという場所で交わる瞬間があって、それぞれの日常に帰っていく。また会おうと再会を誓い、それぞれが帰っていく。ただただ、それだけのことなんだけど、すごく大きなドラマのように感じる美しい時間。4時間前から始まったフェスティバルで、色んなことをしてきた挙句にきた最後のシーン。4時間の長大な音楽劇のラストシーンに辿り着いた感覚。全部が一貫してつながっている。だじゃれは、繋がりのないものを、音で繋ぐ。この感触を覚えて、明日からも生きていきたい、そんな勇気をいっぱいもらった4時間だった。ありがとう。本当は、個人名をみんな書き出していきたいけれども、スタッフとして、アーティストとして、参加者として、視聴者として、あの時間に集まった皆さんに、感謝申し上げます。ありがとう。サンキュー。トリマカシ。サワディークラッ。多謝。