野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

主役も脇役もない

コントラバス奏者の近藤聖也さんの委嘱で、コントラバスと言葉のための作品を作曲している。近藤聖也さんのご自身のリサイタルのために書かれた挨拶文が、なかなか曲者ぶりを発揮している文章で、とりあえず、そこを起点に作曲をし始めた。ぼくなりに解釈して要約すると、こんな感じ。

 

コントラバスっていうのは、単独では存在できない楽器で、オーケストラに入らないと生きていけないみたいだけど、集団行動は嫌だから、単独行動したいぜ、だから、コントラバスで現代音楽やってるんだ。この分野、やっている人が少ないから楽しいし、これだー、やるぞー。

 

それで、コントラバスの勉強を色々した。独奏で超絶技巧になると、コントラバスとは思えない高音を弾きまくることが多い。でも、コントラバスしか出せない音は低音だ。この低い音を出すために、コントラバスはあんなに巨大になっている。そして、巨大なため、運搬も大変。演奏だって、指の移動距離は大変なものだ。満員電車に乗ろうものなら、迷惑がられるか乗せてもらえないか。タクシーにだって、乗車拒否されてしまう。そんな思いを、野村が代弁して歌にしていたが、そういう愚痴や不平も定番のような気がして、コントラバスの音色の魅力を味わいたいと思うようになった。そして、作曲を進めるうちに、そもそも、「おれはコントラバスだ」などと主張をしなくていいじゃないか、と思うようになった。お互いの音色が溶け合って、一つの音楽を作るのだから、エゴを出し続けることもないんじゃないか、と思った。ついさっきまでは、なんとかコントラバスを目立たせよう、コントラバスを主役にしよう、と思っていた。でも、主役も脇役も関係ない音楽になっていきたい、という気分になった。

 

アジアだじゃれ音Line音楽祭』開催まで3日。第1部の動画を全部見てチェック。アナン、メメット、チョーグワンが、3者3様で、それぞれがユニークな活動をしていて、その背後にある考えを語ってくれるのが、本当に面白い。アナンは相当ユーモアが効いているし、タイの田舎の竹林を裸足で歩く子どもたちの様子も新鮮。メメットは、音と映像の不思議な世界にいっちゃってる。独特のトランス感覚と美意識。インドネシアの日常の火を使うシーンが見られるのもいい。チョーグゥワンは、交流できることの喜びが前面に出ていて、だじゃ研ともセッションしたし、ぼくや佐久間さんとの即興でも登場してくれる。

 

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