野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

《たいようオルガン》は、26年前と19年前と13年前と3年前を重ね合わせるのだ

水戸芸術館との過去の仕事は、4つあって、よくよく考えると、どれも新作を作っていて、どれも何らかの形で子どもと関わる仕事だ。

 

1995年 現代美術ギャラリーの黒沢伸さんの企画で、ジョン・ケージの『ローリーホリーオーバーサーカス』という展覧会の中で、吹奏楽とロックバンドと2台ピアノのための《でしでしでし》を作曲し、双葉台中学の吹奏楽部の38名を含む約60名で上演した。

 

2002年 コンサートホールの中村晃さんの企画で、箏による親子企画を実施し、ワークショップに参加した親子と7名のプロの箏曲家(=箏衛門)の約30名で、新曲《せみbongo》を上演した。この作品は、CD『せみ』に収録され、楽譜も出版された。

 

2008年 コンサートホールの中村晃さんの企画で、鍵盤ハーモニカのワークショップを実施し、P-ブロッのコンサートの最後には、子どもたちによる「ケンハモビッグバンド」と「ケンハモ交響楽団」で上演。この時のワークショップをもとに作曲した《Art Tower Mito》は、オランダのフローニンゲンで演奏された。

 

2018年 コンサートホールの高巣真樹さんの企画で、テアトロムジークインプロヴィーゾの《うつくしいまち》を上演。植物公園で、子ども向けのワークショップも行った。 

 

今、準備中の新曲《たいようオルガン》は、水戸芸術館の小さな聴き手のためのコンサートというシリーズとして11月3日に行われる予定で、やはり、子どもと関わる企画だ。しかし、今回は、過去の4回とは大きく違う。過去の4回は、野村は作曲するだけでなく出演しているが、今回は作曲するが出演はしない。過去の4回は、直接子どもたちと接してクリエーションをするワークショップなどがあり、そのうちの3つは子どもたちと共演もしたが、今回はそうした接触がない。ぼくは、なんとなく、26年前の中学生の吹奏楽の思い出、19年前の小学生との箏の思い出、13年前の小学生との鍵盤ハーモニカの思い出、3年前の小学生との様々なパーカッションの思い出を、《たいようオルガン》の中に少し入れてみたいと思い始めた。吹奏楽がオルガンになり、箏がオルガンになり、鍵盤ハーモニカがオルガンになり、パーカッションがオルガンになる。

 

ここまで、絵本を見て、その世界から作曲してきた。また、パイプオルガンを研究して、オルガンのインスピレーションで作曲してきた。さらには、石丸由佳さんというオルガニストの魅力、ソプラノ歌手の小林沙羅さんの魅力に触発されて作曲してきた。そこに、まだ何かが足りないと感じていて、水戸という土地でつくること。水戸の人々との関わりでつくること、をしたいと、ぼくは思っているようだ。明日は、26年前と19年前と13年前と3年前の音楽と《たいようオルガン》を出会わせて、何が起こるかをやってみようと思う。

 

今日は、水戸芸術館に送ってもらった資料動画「オルガンレクチャーコンサート」と小さな聴き手のためのコンサート「象のババール」の二つを見て、勉強中。オルガンレクチャーは、オルガンの中にカメラが入っていって、その映像をスクリーンに映しながら、オルガン職人さんが解説してくれて、作曲する上で参考になることがいっぱい。チャルメラみたいな音がするパイプの名前が、シャラメイ!Vincent Warnier(1967-)というオルガニストの作曲した曲も勉強。

 

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プーランクの《象のババール》は有名な作品だけど、朗読つきでスクリーンに絵本を投影しながら行われる演奏を聴き、素晴らしいが、《たいようオルガン》では、こうはならないな、と思った。荒井良二さんの絵本は、ストーリーがある物語ではないので、語りと音楽が別々にあるという感じではないだろう。