野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

民謡秘宝紀行/モーリス・オアナの音楽/センチュリー響との打ち合わせ/たいようオルガン

斎藤完「民謡秘宝紀行」(白水社)という本が、面白過ぎる。YCAM山口情報芸術センター)で色々やっていた頃に、山口大学音楽学の先生である斎藤完さんと出会い、ご著書の「飲めや歌えやイスタンブール」(音楽之友社)をいただき、トルコ留学の体験記があまりに面白かったので、印象に残っているのだが、最近、また「飲めや歌えやイスタンブール」を読み直す機会があり、斎藤さんって他に本を書いてないのかと購入したのが、「民謡秘宝紀行」。B級グルメ本というのは、よくあるけど、B級民謡本というのは、珍しい。この本に出てくる民謡は、歌詞が変だったり、成立が独特だったりして、それを取材する著者の体験談も面白く、要するに、民謡というものに著者がツッコミを入れていく本。以下、目次。

 

 

あと最近読んでいる本に、Caroline Rae著「The Music of Maurice Ohana」(Ashgate)がある。モロッコ生まれで、スペイン系で、イギリス国籍で、パリに長く住んで、フランス国籍になった国籍とか民族とかがミックスされた存在である作曲家。著者曰く、20世紀後半のフランスには、2つの作曲の流れがあって、一つは、メシアンの生徒だったり、IRCAMだったり、アンサンブル・アンテルコンタンポランだったりする流れと、そうでない流れ。オアナやデュティーユは後者。日本にいると、前者の情報ばかりが入ってきて、なかなか後者の情報が入ってきにくい。だから、後者はいなかったかのような音楽史が作られていく。ぼくは、10代の頃にメシアンの影響を受け過ぎたこともあり、これまでオアナの音楽に大して興味を持っていなかった。メシアンの圧倒的な個性の前で、オアナの音楽はかつてのぼくにとって重要ではなかった。でも、音列音楽を拒絶し独自路線で作曲していたオアナの個性が、今頃になって気になり始めた。運命のサインを読み取り、偶然の出会いを必然に変えた作曲家。世界中の太鼓を集めた作曲家。

 

2014年から、日本センチュリー交響楽団と仕事をしてきて、今年で8年目になる。これまでの7年間は、柿塚拓真さんと仕事をしてきたが、柿塚さんがセンチュリーを退職したので、今日は楽団長の望月正樹さん、柿塚さんの後任の本城聖美さんと打ち合わせ。「世界のしょうない音楽祭&ワークショップ」について。2020年度は、リモートでワークショップを開催。各自、自分の楽器を使う。2019年度以前は、対面で開催で、楽器はセンチュリー響や大阪音大の楽器を使った。はたして、今年度はどうするか、という話と日程のことなど。コロナで接触を伴わない方がいいのであれば、対面でも楽器の貸し出しをしない方がいいのかもしれない、などなど。ワクチンの接種が進むと、以前と同じように開催できるようになるのかもしれない。先のことはわからないが、色々想定。

 

《たいようオルガン》を作曲中。この曲の初演で、朗読や歌で関わっていただく小林沙羅さんの動画を見て、あまりに素敵な歌声に、荒井良二さんの絵本に作曲する喜びとともに、素敵な演奏家に演奏していただける喜びとで、作曲が楽しい。とりあえず、今月、だーっと作曲して、1ヶ月ほど熟成させてのち、水戸芸術館でオルガンを下見して、そこでオルガンの音色を確認して、曲を微修正して7月末に完成の予定。それにしても、毎日、作曲しては絵本を眺めていて、絵本の絵が色々語りかけてきてくれるのも、楽しい。

 

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