野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ピアノ曲のお産/たいようオルガン/五線紙のパンセ

今週ずっと作曲しているピアノ曲は、お産についての音楽だ。産む側からすればお産についての音楽で、生まれる側からすると誕生についての音楽で、胎内からという世界から、この世界に飛び出してくる体験についての音楽。人が産むとはどういうことで、生まれるとはどういうことで、生命とはどういうことで、生きることとはどういうことで、死とはどういうことで、世界とはどういうことで、ということを、理屈ではなく音で理解しようとすること。

 

そんな風に作曲をしている。何かが生まれているのか生まれていないのか、無我夢中に五線紙に音を書き残した。物語以前の物語。音楽以前の音楽。人間以前の人間。息をすること。脈をうつこと。そんな音楽を書いてきた。一度、ここで熟成させて寝かせようと思い、今日は、曲を自宅のピアノでレコーディングしてみた。何か、今までの自分が書いてきた音楽とは、少し違う境地が顔を覗かしているようでもあり、まだ、自分でも判別がつかないので、しばらく寝かせてみよう。

 

本日は、水戸芸術館の高巣真樹さんと、絵本作家という枠組みに収まりきらないアーティストの荒井良二さんと打ち合わせ。荒井さんは、2006年にNHKの番組「あいのて」で美術を担当していただいて以来、福岡や新潟でワークショップをしたり、山形で即興セッションをしたり、共演をいっぱいしているが、荒井さんの絵本に作曲したことはない。今回は、高巣さんの発案で荒井さんの「たいようオルガン」という絵本に、ぼくが作曲して、オルガン(パイプオルガン)の新曲を作るというプロジェクトになる予定。実は、荒井さんの「たいようオルガン」を、ぼくは持っていて、大好きな絵本なので、この音楽を作曲することができるのは、本当に嬉しい。そして、2005年に《オルガンスープ》を作曲して以来、オルガンの新曲を作曲する機会がなかったので、それも楽しみ。

 

メルキュールデザールの「五線紙のパンセ」に書くコラムを執筆していて、3回シリーズなので、2019年のポーランドでレクチャーした3つのテーマ、鍵盤ハーモニカ、相撲、オーケストラを各回のテーマにすることにした。ということで、1回目は鍵盤ハーモニカ。書くことがいっぱいありすぎて、いつまでたっても終わらない。