野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

Sound & Word Network/ハイドン/ホセ・マセダ

Sound & Word Networkの数珠つなぎプロジェクトのために作曲した小品を自宅で録音する。ピアノと声で1分の作品。Slackにデータを送る。Slackが使い慣れないので、戸惑いながら。現代のメディアに全然対応できていないけれども、なんとか送れてよかった。

 

ここ数日、「四股1000」では、安田登『野の古典』を音読していて、これが本当に面白い。声に出しながら、四股を踏みながら読むのに最適な本だ。

 

1週間後には、「ハイドン大學」のレクチャーが待っているので、ハイドンの楽譜を見ている。今日は、交響曲の83番の譜面を見ていて、「めんどり」という愛称で知られる曲だが、本当に演奏していると変なコッココッココッココッコみたいなのが、いろんな楽器に出てきて、これをバカバカしくやると、この曲は面白いんだろうなぁ、と思う。79番も見ている。2楽章がゆっくりの3拍子なのに、途中で急に速い二拍子になったりしている。鈴木潤さんとレクチャーするのが楽しみ。潤さんとせっかくのトーク配信なので、ハイドンの主題による即興セッションするとか、色々できそうな気がするなぁ。

 

今年度に実現できなかった「千住の1010人 in 2020年」は「千住の1010人 from 2020年」と企画名を変えてオンラインでやっている。オンラインで数十人ずつで集まるイベントをいっぱい開催したので、これらを映像上で重ね合わせて、バーチャルに1010人が集まり、バーチャルに千住の町のあちこちで音を奏でている体験ができないか、と日々、動画をチェックしては、映像の甲斐田さんにメールをしている。10月に香港の国際会議と行ったお茶碗セッションが、12月に行った台所セッションと混ざり合って100人になっていくようなこと。

 

昼に、恩田晃さんと打ち合わせをして、夜にTPAM関連で恩田さんとオンライントークをした。作曲家ホセ・マセダが80歳だった1997年、ぼくは29歳だった。そして、幸運にも、ホセ・マセダと野村誠という二人の作曲家をテーマにしたコンサートを2種類企画してもらい、ホセ・マセダと時間を過ごした。今にして思うと、もっとマセダといっぱい話しておけばよかった。もっと、マセダに聞けばよかったなぁ、と思う。あの不均等なわかりにくい指揮こそが、マセダの音楽の魅力を生み出していた。マルコス独裁政権下で政府の援助を受けながら、言葉を使わずに政府を批判し民主主義へのデモともとれるような大掛かりな試みを行った。ぼくはマセダの生徒じゃないけれど、でも、京都の町中で偶々一人で道に迷っているマセダを見かけ、慌ててバスを降りてお茶をした。ぼくが支払おうとすると、「学生の分は先生が払う。」と言って払ってくれようとしたので、「ぼく、学生じゃないから」と言ったけど払ってくれた。だから、ぼくはマセダの弟子なのかもしれない。ぼくがやった「千住の1010人」も、きっとマセダから受けた影響もたくさんたくさん入っている。もちろん、マセダが成し得なかったことにも、次の世代として色々チャレンジしている。マセダの話をできるのは嬉しい。