野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

弓から弓へ/ルーマニア/ルドゥストナリス

ついにクリスマス。昨年12月24日にポーランドより帰国して以来、一度も外国に行っていないので、丸一年、日本を出ていないことになる。次、国外に行くのは、いつになるだろうか?このブログを付け始めて以降、日本国内に連続で長期いた最長記録は、2005年10月11日にイギリスから帰国し、2006年11月21日にイギリスに出国するまでの1年1ヶ月10日間。今回は、この記録を大幅に更新しそう。次に海外に行く時には、本当に感激するんだろうなぁ。

 

東京の上野にある大学のコントラバス科の水野翔子さんは、卒業試験で野村誠作曲《弓から弓へ》を演奏する。リハーサルの動画を送っていただき、弓道の弓でコントラバスを演奏するところも、通常の弓で演奏するところも大変いい感じ。この曲を卒業試験の曲目とするのに、水野さんは色々苦労をされていたが、先生から通常のコントラバスの弓で演奏するところがあまりにも短すぎると言われたそうで、コントラバスで演奏する部分を何度か反復して演奏していいかとの打診がきたので、繰り返すくらいならば、別のパッセージを弾いた方が音楽的にも試験的にもいいと思うので、今朝、30小節ほど書き加えたバージョンを作曲して送る。それにしても、卒業試験で敢えて数々の前例がないことに挑戦しようとする水野さんは偉い。願わくば、彼女の勇気が大学の先生たちにも評価されるといいなぁ。

 

「世界のしょうない音楽祭2021」に向けての作曲作業。5つの場面から成る新曲は、日本→ルーマニア→インド→インドネシア→中国となる予定。本日は、ルーマニアをテーマにした回をもとに。もともとリゲティの「ルーマニア協奏曲」を下敷きにしたワークショップだったのだが、ワークショップで生まれてきた架空のルーマニアの音楽は、リゲティとも違う味わい。

 

ピアノの練習の合間に、ヒンデミット作曲の《Ludus Tonalis》を全曲弾いてみた。ほとんど即興で作曲したんじゃないか、という感じすらする適当な音が羅列されているかのような曲が次々に続く。デタラメに音を並べたのと、作曲家が音を構築するのが並存しているような音楽。タイトルは「音の遊び」という意味らしいが、本当に遊んでいるのは伝わってくる。本当に悪戯好きな作曲家だったのだろう。最後の25曲目にいたっては、1曲目の楽譜を逆さまにしただけ。大した作曲家だ。

 

里村さんと野村誠ウェブサイトの更新に向けての会議。今日は、プロジェクトを列記していく作業を進めた。本当に色々あるので、思いつくままに挙げていって、整理していこう。