野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ピアノ/四股/弓

久しぶりの京都ライフ。注文していた本が届いている。『umbrella uprising.  A VISUAL DOCUMENT OF THE 2019 HONG KONG DOCUMENTS』は、2019年の香港の抗議行動のビジュアルドキュメント。写真、ポスター、イラストなどなど。ニュースで伝わってこない様々なことが、視覚的に伝わってくる。あとは、Peter Freeman著『The Music of Antonio Carlos Jobim』。先月、チェロの北口大輔くんとキーボードの鈴木潤さんとの名古屋でのライブで、ジョビンの曲を色々やって、このボサノバの祖であるブラジルの作曲家について、どうやって新しい音楽を切り開いていったのか、勉強してみたくなって購入。今まで、『イパネマの娘』はケンハモで何度も演奏させてもらっているけれども、ビラ=ロボスにも、ドビュッシーにも、サンバにも影響を受けたジョビンの背景を理解したくなった。

 

半月ぶりの自宅で、鍵盤ハーモニカは毎日吹いていたけれども、ピアノを弾くのは半月ぶり。鍵盤ハーモニカだと基本は右手を使うので、左手が動くかなぁ、とリハビリを兼ねて、バッハを弾いてみる。半月ぶりに触るピアノだが、感覚はすぐ戻ってくる。

 

久しぶりに「四股1000」にも参加。四股を1000回踏む感覚も懐かしく、股関節の感覚を確かめながら踏む。北海道では、浜辺を山ほど歩いたので、毎日の運動量は多かったけれど、四股はそんなに踏んでいなかったので、これもリハビリ。演奏家から作曲家に関するコメントがあり、作曲家から演奏家に対するコメントがあり、演奏家と作曲家のよい相互関係について、いろいろ考えさせられる。

 

ちなみに、一年前の今日は、小川和代ヴァイオリンリサイタルで、懐かしく、あの時の動画をYouTubeで見る。

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次の大きな本番は、1月7日の「愛と知のメシアン」。これは、ピアニストの中川賢一さんとの2台ピアノのコンサート。中川さんはメシアンスペシャリストで、ピアノ一筋の中川さんと、ピアノを弾いたりケンハモ吹いたり流木や瓦を演奏したり即興したりする野村が2台ピアノで共演するなんて、昔だったら恐れ多くてやらなかったと思う。自分の拙いピアノ演奏では申し訳ないと思っていた。でも、最近は少しずーずーしくなってきて、こうした色々なことをしているからこそ、作曲家ならではの野村のピアノにも味があるはずだと、こうした機会を増やしている。そして、メシアン作曲の「アーメンの幻影」という曲が、明らかに第1ピアノを超絶技巧のロリオが弾き、第2ピアノをメシアン自身が弾く前提で作曲していて、第2ピアノだったら、ぼくでも弾ける。そして、ぼくが作曲した「オリヴィエ・メシアンに注ぐ20のまなざし」も、第1ピアノは中川さんの超絶ピアノを前提に作曲し、第2ピアノはぼくが弾く前提で書いたので、頑張って練習すれば、なんとかなる。ということで、今日から、これらの曲を猛練習。

 

水野翔子さんが卒業試験で演奏する《弓から弓へ(2020版)》は、弓道の弓でコントラバスを演奏したりする曲で、もともと、美術家の島袋道浩くんの映像作品のために作曲したもの。今回、演奏会としては、初めて演奏される。弓道の弓は登場するし、前例のないことが数々あり、試験曲として大学に受理されるかどうかでも、数々の試練があったらしいが、正式に許可がおりたとの報告を受ける。そして、リハーサルの音源も聞かせてもらう。とてもいい感じの演奏になっているので、非常に楽しみだ。せっかくなので、譜面に少し表情やニュアンスの指示などを書き直して送る。今まで、大学の卒業試験で野村作品を弾いたケースといえば、京都女子大の大学院の修了試験に、野村誠作曲《たまごをもって家出する》を弾いた人がいたのと、アコーディオンの大田智美さんがドイツのフォルクヴァンク音楽大学室内楽コースの修了試験で野村誠作曲《ウマとの音楽》を世界初演したのと、同じく大田智美さんがフォルクヴァンク音楽大学ソリストコースで野村誠作曲《アコーディオン協奏曲》を世界初演したのなどがある。

 

イギリスのヒューからクリスマスカードとともにCDが届く。新しいアルバムHugh Nankivell《Torquay Rewilding》。クレジットを見たら、ぼくの名前が入っている。あれ、っと思ったら、最後の曲は、15人の人が別々の家で別々のピアノを録音したものが重なっている曲で、ぼくも録音を送ったのだった。