野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

Memu Earth Labレジデンス12日目/レコーディング、ラジオ、世界のしょうない

Memu Earth Labレジデンス12日目。午前中、ホロカヤントー(という沼)でのレコーディング。氷の張った沼の中央にドローンを使ってマイクを設置し、氷の上に石を投げて、氷の上を滑る音を録音する。海岸で石を拾い集めて後、野村、里村、森下、ニック、ジェイムス、千葉の6人で順に石を投げて後、一斉に石を投げ続ける。千葉さん曰く、氷が天然のプレートリバーブとなり、特殊な音響効果を生み出しているとのこと。続いて、流木の巨大な丸太の上にのって、流木で叩く。もともと、11月28日に森下さん、里村さんと3人でホロカヤントーに来た時に、この丸太流木の上で音を鳴らして遊んだ。これを大勢でやれると面白いだろうね、と言っていた。それから10日経って、今、こうしてそれを実現しているのが嬉しい。

 

午後、ニックのラジオ番組CICの生放送に出演。最初に、森下さんがMemu Earth Labについて説明するところから始まり、白井さんの湖水地方コモンズの話、ジェイムスのフィールド録音の話、隈研吾の建築についての話、千葉さんのトンコリ演奏の話などを経て、野村のレジデンスについて語る。この土地を楽譜として読むこと、この土地を楽器として演奏すること、この土地をスタジオとして楽器を演奏すること、3つの関わり方でこの土地にアプローチしてきた。そんな中で、いろいろな疑問が湧いてくる。明日のことが予測できない毎日で、その中で即興的に日々を過ごし、いろいろ発見もしてきた。そうしたいろいろな話をした後、最後に、今朝の流木演奏の音源を流して番組が終わった。ラジオ放送の最後に、こんなにシンプルでプリミティブな音楽が流れたこと、それを番組最後のトラックとして、ニックが選曲したことが嬉しかった。本当にシンプルな行為の重なり合いとしての音楽でありながら、単純なようで常に変化に富んでいて、素朴で味わい深い音楽。演奏している人は別に音楽のスペシャリストとかでなく、その行為も演奏なのか何なのか形容し難い、単に流木を木の上で弾ませているだけ。でも、それが楽しく、こうして協遊していくことが美しい。

 

その後、最後のレコーディング。馬の雨天練習場だった巨大な建物の中庭スペースの不思議な反響を遊ぶ。札幌から訪ねてきた(とんつーレコードで「ノムラノピアノ」をリリースした)小山冴子さんや偶々札幌に来ていた(かつて鳥取のことめやで何度もお世話になった)藤木美里さんも加わり、馬の飼育係の児玉さんも偶々通りがかり加わり、レコーディング。超広大な敷地で、ソーシャルディスタンスどころか、何十mも間隔を離れた配置で手拍子をしたり、声を出したり。「千住の1010人」を演奏した時よりも距離が離れていたかもしれない。こうして音で遊びながら日が暮れていった。

 

千葉さん、ニック、ジェイムスは今日で出発。飛行場へ。ぼくは、「世界のしょうない音楽ワークショップ」で、本日のテーマはインド音楽。田中峰彦さんからインドの歌い回しについてのインド風教授法で伝授していただき、鹿を呼び寄せるラーガでグループごとに創作。

 

夜は、小山さん、藤木さん、森下さん、里村さんと語り合う。怒涛の3日間が終わり、実質、残り2日。