野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

10時間10分完奏!!世界だじゃれ音Line音楽祭

ついに、「世界だじゃれ音Line音楽祭」Day1を開催。オンラインでのイベントだったので、イギリス、ポーランド、タイ、マレーシア、インドネシア、オーストラリア、香港、中国など、海外からの参加者もあり、国内からも多数、参加があった。大きな事故もなく、10時間10分の大イベントを開催できて、まずは関係スタッフ、出演者、参加者、視聴者の皆さんに大変感謝。

 

10時間10分のイベントを開催するのは、なかなかハードで、これだけの規模のオンラインで参加型の催しを行ったのも初めてだった。初めてだっただけに、収穫も多かった。

 

10:10からのオープニングアクトでは、前日に思いついた「オープニングアク取り」も、リールトゥリールが準備してくれて、実現。オープニングアクトでは、やはり前日に思いついた次々に色々なものを開いていくパフォーマンスを行ったが、コロナで物理的にも精神的のも閉じてしまいがちな生活が続いているので、次々に繰り広げられる「オープン」に、うるっとしながらピアノを弾いた。

 

11:00からのホーメイと掃除機の共演は、参加者が定員を超えてしまった人気プログラム。掃除を一斉に鳴らすと、音声トラブルなど起きないか心配ではあったが、掃除機のアンサンブルと尾引浩志ホーメイの混ざり具合は、とても面白い音響だった。

 

12:00からの池田邦太郎さんと斎藤明子さんによる手作り楽器レギオンは、シンプルな仕組みなのに、ホセ・マセダもびっくりなサウンドになっていた。どこかの国の民族音楽をベースにした新しい現代音楽のようなサウンド。これも、ZOOMを使って可能になる音楽の形態の一つ。

 

13:00からのアナンとのヌードル・ノイズ・オーケストラ。コロナ以降、大勢で集まって食事をすることができない。30人近い人々が、麺を同時に食べて、そのすする音での合奏。ただ食べるだけのノイズミュージック。美味しかった。

 

14:00からの上田假奈代とのほんまにブックビッグバンドでは、本をパタンパタンとする音楽をして、それをバックに上田假奈代が朗読する予定だった。打ち合わせでも、ズームは声をフォーカスして拾うので、他の人は声を出さずに、本の音を出し、その合間に朗読をする。朗読も、時々、間をつくって、本のパタパタ音が聞こえるように、と言っていた。本番前に、参加者の人に、上田假奈代が「もし気になった言葉があったら、声に出してもいいです」と伝えた。本番が始まると、それぞれがすごい勢いで声を出し始めて、音読のオーケストラになった。もはや、本のパタンパタンは聞こえてこない。これは、想定外のことだった。おそらく、上田假奈代に触発されて、みなが声を発したくなったのだろう。普通の朗読だと、みんなが音読すれば、声が混じり合い言葉は埋もれる。ところが、会議用のアプリであるZOOMは、勝手にどこかにフォーカスするので、断片的に色々な言葉が聞こえてくる。なるほど、こういう言葉の出会い方もあるのだ。色々な人の手元にある本の中の言葉がシャッフルされて出てくる。想定外のしかし面白い体験だった。

 

10:10-14:20までの動画はこちら。

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15:00からは、インドネシアの作曲家メメットとジャワ舞踊の佐久間新さんとの石のセッション。15:00になってもメメットが入場しているものの画面に現れない。おそらく現地のネット環境の問題。メメットが登場する前に石でのセッションをスタートすると、 途中でメメットも登場。当初はメメットに進行を委ねる予定だったし、彼はディレクションするつもりだったと思うが、ただただ、石をカチカチと鳴らし続ける20分になり、逆に一切言葉を介さずに、石というプリミティブなものだけでコミュニケーションをしようとしたことで、なんとか五感をフル稼働して、いや第六感までフル稼働して意思疎通しようとする精一杯の時間になった。終わると、メメットが準備していた挨拶文(すべて日本語がローマ字で打たれているもの)がメメットから届いていた。彼は、これを読むつもりで準備していたのだが、言葉を超えた何かを体験する時間になった。

 

16:00からは、香港の福祉施設JCRCで行なっているアートプロジェクトi-dArtと佐久間さんとのセッション。烏龍茶、プーアール茶、、、、と言いながらの声のセッションに野村はピアノを弾く。だじゃ研がお茶を飲む。コロナになって、香港に行ってやる予定だったワークショップや公演ができなくなった。でも、香港の人々との時間を、こうして日本の人々と共有する、混ぜ合わせることができたことも嬉しい。リモートでの難しさもあるが、こうした繋がりもつくれる。

 

17:00からは、大田智美のアコーディオンに合わせて、カーテンを開け閉めした。色々な家庭のカーテンが共演する。今、同時に夕暮れ時。でも、沖縄の空は明るく、東京の空は薄暗い。そうした日本国内での時差も感じながら。そして、カーテンを動かすだけでも、それぞれのニュアンスや表情があり、それぞれの個性が表れる。ぼくは、それをとても愛おしいと思った。こんな音楽会ができるんだ。野村作曲の「オットセイ」を大田智美のアコーディオンで聞きながら、カーテンの開閉を見ていて、人々の生活の営みを美しく思った。実は、「オットセイ」は、映像作品「ズーラシアの音楽」の最後の曲であり、「動物の演劇組曲」の最後の曲でもある。それぞれの作品は、この曲で幕を閉じる。でも、今日の催しは、まだ幕は閉じない。

 

18:00からのイベントに向けて、APCMN(アジア太平洋コミュニティー音楽ネットワーク)のオンライン会議に行き、いきなり参加者の皆さんに「世界だじゃれ音Line音楽祭」の話をして、いきなり茶碗でセッションして、5分後にこちらのリンクに来てください、とお誘いするという強引なプロモーション。ぼくも関わっているAPCMNとだじゃれ音楽を結びつけたかった。それでも、マレーシア、オーストラリア、香港、イギリスから、5分後にかけつけてくれて、さらには、ポーランドからも友人が参加してくれて、国際色豊かなセッションになり、もはや、英語や日本語やいろんな言葉で説明していても20分では、混乱だけに陥るので、ルールを自由で、お茶碗で即興をすること、他の楽器もやってもいいこと、自由に交流すること、だけを告げて始める。途中で、イギリスから参加のコミュニティ音楽の達人ピートさんが、チャットを駆使して即興の指示を出したり。面白い交流だった。

 

15:00-18:20までの動画はこちら。

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19:00からのジンタらムータとのパレードでは、数々のぬいぐるみで、ひたすら20分間画面上をパレードした。狭い画面上をパレードする20分は、なかなか重労働。親子で参加している人が多かったのも、このプログラムの特徴。そして、大熊ワタルさんとこぐれみわぞうさんの音楽に、だんだん参加者からもいろんな音が鳴り、いい感じにハイテンションになりながら20分パレードした。たったの20分なのに、体力を使いまくった。

 

19:00-19:20の動画はこちら。

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そして、ついに20:00-20:20の催しまで来た。「集まれ!風呂フェッショナル」を歌い、カンボジア国境近くのヨードさんの影絵に、大田智美のアコーディオンと上田假奈代の朗読で始まる。続いて、尾引浩志ホーメイ+イギルにアナンの歌声が重なり合う。ピートのトランペットと大熊さんのクラリネット二刀流。佐久間さんのダンスとみわぞうさんの打楽器。こひやまさんの影絵も加わり、大田智美のドイツ語、アナンのタイ語、佐久間新のインドネシア語、ピートの英語、上田假奈代の日本語で、影絵に複数の言語が重なり合う。そして、20:17、だじゃ研も加わり、自由なセッションの時間

になり、アナンがエレキ民族楽器が爆音だ、いろんな音や声や動きや光が交差して、20:20。10:10 to 20:20をやり終えることができた。

 

20:00-20:20の動画はこちら。

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今日の様子は、以上のようにYouTubeアーカイブされているが、これらの映像は、再構成して年度内に映像作品として公開できるようにする予定。こうした奇跡の時間、体験を残していきたいので。また、11月29日にはday2、さらに、12月以降も開催していく予定。これは序章なので、よろしくです。

 

みなさま、本当におつかれさま。カツカレーさま。