野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

斎藤完著「飲めや歌えやイスタンブール トルコの酒場で音楽修行」

3月28日に無観客コンサート(ニコニコ動画)で大田智美さんと世界初演した野村誠作曲《Beethoven 250  迷惑な反復コーキョー曲》(2020)を、チェロ+ケンハモ+ピアノに編曲して、11月23日の名古屋でのコンサートで演奏する。

 

ということで、今日から少しずつ《Beethoven 250》の編曲作業を始めようと、編曲を始めたら、気分がのってしまって、結局、一気に編曲した。原曲のピアノパートはそのままで、大雑把には、アコーディオンの右手を鍵盤ハーモニカに、左手をチェロに移す。でも、アコーディオンの左手で和音を弾いているところがあったり、そのままチェロにならないところもあるし、トリオならではの掛け合いなどもあった方がいいので、そうしたところはアレンジしたけれども、基本はあまり手を加えすぎずに。

 

編曲していて、自分の作曲した曲なのだけれども、美しい冒頭からすっかり魅了されてしまい、この曲を再び演奏できること、本当に嬉しい。北口大輔(チェロ)、鈴木潤(ケンハモ)、野村誠(ピアノ)で演奏する日が待ち遠しい。

 

北口大輔がチェロリサイタルするかと思いきや・・・野村と鈴木が乱入してみた!ークラシックジャズチャンプルー | アッセンブリッジ・ナゴヤ│Assembridge NAGOYA

 

斎藤完著「飲めや歌えやイスタンブール トルコの酒場で音楽修行」(音楽之友社)を読了。この本、めちゃくちゃ面白い。以前、山口で演奏した時に山口大学の音楽の先生である斎藤完さんよりいただき、その時にも読んで面白かった記憶があるのだが、最近、また引っ張り出してきて改めて全部読んだ。トルコに音楽留学して、民謡が庶民に親しまれている場を体感すべくカフェバーで働き始めた体験記で、臨場感たっぷりのエピソードに爆笑の連続。途中のバーラマレッスン記も珍体験。特に、イスラムシーア派でもスンニ派でもない少数派のアレヴィーの宗教儀礼を調査するためにハジュベクタシュへの遠征は圧巻。宗教儀礼の調査の後にカフェバーに戻ったところで、民謡とは何か、カフェバーとは何かと問う。近年、「社会包摂」なる言葉をよく耳にするようになったが、「社会包摂」という言葉が誕生する以前に、「社会包摂」的な問いに対する回答を著者はトルコ留学から得ていたのだ。おすすめ。

 

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7月に作曲した新曲《世界をしずめる 踏歌 戸島美喜夫へ》がいよいよ10月28日に山本亜美さんにより世界初演になる。この演奏会は、コロナ対策で限定席数のため、既に満席らしい。ぼくは本番を聞きに行く予定だが、事前にリハーサルに立ち会えないので、本日、山本亜美さんより演奏の録音が届く。ぼくが作曲した音楽が、徐々に山本さんの体内で熟成されてきているのを感じる。本番がますます楽しみになった。