野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

JACSHA城崎レジデンス 九日目 金管バトンバンドと60分一本勝負

JACSHA(=日本相撲聞芸術作曲家協議会)のKIAC(=城崎国際アートセンター)レジデンス9日目。

 

舞台芸術という日本語がある。どこでも舞台になり得る。劇場の舞台も舞台だが、客席も舞台になり得るし、ロビーも舞台になり得るし、ストリートも舞台になる。日常生活も舞台になるし、秋祭りの行われる神社やその周辺も舞台。舞台はどこにあるのか?舞台芸術家は、舞台を探す旅に出る。すると、世界は舞台に満ちていることに気づく。JACSHAの「オペラ双葉山」の舞台は、どんな舞台だろう。既存の舞台以外に、舞台を拡張し、舞台を創出していくことから始まっていく。土俵のなかったところに土俵をつくるように、舞台のなかったところに舞台をつくる。

 

今日は、いよいよ竹野小学校金管バトンバンドとのオンラインワークショップ。対面で行えないし、たった60分一本勝負。一期一会。かけがいのない時間にしたい。そのために、準備をする。樅山、野村、鶴見の3人がホールに、別室の里村が仮想の竹野小金管バンドとして、オンラインで繋いでテストする。これは、聞き取れる?動きを真似できる?とチェックしていく。小学生は右左を混乱するから、鏡になるように左右逆に動いて真似してもらった方がいいのでは、などなど、テストする。そして、竹野相撲甚句を3人で演奏できるようにアレンジしたり、金管バトンバンドでできるようにアレンジしていく、バタバタの現場。なんとか見通しが立ち、現地に行っているKIACスタッフとネット環境をチェックも、ギリギリまで粘って、なんとかなり、いよいよ本番。

 

こちらは、テレビ局の生放送状態。KIACの藤原さんが音響スタッフとしていて、里村がフロアディレクター。1時間の生放送だけど、単なる放送じゃなくって、竹野小の40人との双方向性。現地でKIAC橋本さんが子どもたちに挨拶の後、こちらで凄いテンションで、鶴見、樅山、野村が挨拶。そして、ケンハモ+サックス+打楽器のトリオで、竹野相撲甚句を演奏。続いて、竹野相撲甚句のステップを説明/実演レッスン。これをやっていると、現地にいる相撲甚句保存会の與田さんが飛び入りしてきて、指導を始める。嬉しいコラボ。ステップを子どもたちに覚えてもらった後に、鶴見による弓取式(もどき)の実演に野村がケンハモで共演して披露。これを見てもらい、バトンの23名には、この動きをもとに竹野相撲甚句の動きにバトンを加えてもらう。続いて、金管を、打楽器、トランペット、ホルン、トロンボーンでアレンジして、その場で竹野相撲甚句をもとにした3パートの合奏を組み立てていく。最後は、バトンと金管で合奏し、めちゃくちゃカッコいい。子どもたちから感想をいただき、大成功の1時間ワークショップ終了。

 

うーむ。力いっぱいの1時間。あと何回かあったら、もっとやれたと思うし、それで金管バトンバンドとパレードしたりしたかったけれども、コロナでかなわず。でも、今回、1回だけだけれども、オンラインで対面はできなかったけれども、実現できて、手応えをつかめる体験ができて、本当によかった。ここまで共有できれば、あとは簡単な譜面を書いて渡せば、竹野相撲甚句は竹野小学校のレパートリーになっていくと思うし、そうなってくれたら心底嬉しい。現地でフル稼働してくれたKIACスタッフの皆さん、本当にありがとう。

 

9月6日の北斎バンドのコンサートの動画があがってきて、その動画の確認作業をして後、夜は、レジデンス期間中に波田野さんがとった映像を、ホールの大画面で見続けるレイトショー。21時ごろ見始めて、深夜1時半頃まで4時間以上見続け、波田野さんの映像が素晴らしい長編映画になることを確信すると同時に、「オペラ双葉山 竹野の段」に向けて、創作のヒントがいっぱい転がってきて、明日、11日のコンサートのプランを立てるのが、ますます楽しみになってきた。とこ〜、どすこい、どすこい。