野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ZOOMを楽器として扱う

問題行動マガジンに書いた記事「06. 排除に自覚的になったのは – 問題行動マガジン」が公開になった。いつも廊下に立たされていた小学校時代のエピソードを綴ったもの。

 

里村さんとリリース準備でお絵かき。こども時代に、絵を褒められたことはなく、学校で貼りだされたことも一度もなかった。とにかく、絵が下手というレッテルを貼られたのが学校の思い出。大人になって、美術家の島袋くんが、「野村くん、大人になって幼稚園児のような絵はなかなか描かれへんで。」と褒めてくれて以来、こんな絵でも自分の個性だと思えるようになった。里村さんがオイルパステルで塗ると、ぼくの絵が随分よく見える。問題行動マガジンに砂連尾さんは、お絵かきを連載しているが(ペンギンの頃を思い出した鶏 – 問題行動マガジン)、猛暑でまいってか、最近は投稿がない。涼しくなったら、またお絵かきするのではないか、と思う。お絵かきは楽しい。

 

台風は関西は直撃ではなかったが、それでも、すごい風の音がする。サウンドアーティストのMike Blowが風の音のプロジェクトをやっていて、風の音の録音を集めている。彼から協力の打診があり、台風が接近したら録音しようとは思っていた。今日の京都は、風の音は美しいし、雨も降らず、嵐もないので、録音に最適。風の音を録音する。

 

夕方より、「千住の1010人 in 2020年」の打ち合わせ。名前を変更して、「千住の1010人 from 2020年」として、今年で完結せずに来年以降につながっていくイメージで考え中。そして、10月31日には、オンラインの参加型音楽フェスとでもいうべき内容になりそうで、近々、詳細が公開になりそうです。

 

夜は、だじゃ研(=だじゃれ音楽研究会)。本日は、ZOOMというリモート会議アプリを、楽器として演奏できることを目指した。会議用のツールを便宜上音楽に活用するのではなく、ZOOMという楽器を熟知して、どうすればどんなノイズが出るのか、どうすれば音が聞こえなくなるのか、などを、徹底的に洗い出そうとした。これは、かつて「瓦の音楽」で漠然と叩いていた瓦を、一枚一枚の型番を調べ、そのピッチを調べ、一枚ずつの瓦の楽器としての特徴をあぶりだした作業とも似ている。

 

とりあえず、敢えて、背景雑音の除去を最大にして、音を鳴らしてみた。すると、驚くべきことに、ジャンベカホンなどの打楽器は、まったく音が聞こえなくなるのに、ウクレレやギターは、音が消されないのだ。ウクレレやギターは、ZOOMによって、音が消えない楽器のように思う。

 

トランペットでも、鍵盤ハーモニカでも、リコーダーでも、背景雑音の除去がオンになっていると、メロディーが突然弱くなったりする。背景雑音を無効化すると、メロディーは吹いた通りに、全部が聞こえる。

 

背景雑音を除去しても、これらの楽器を同時に鳴らしても、ハモらない。例えば、ドー、ミー、ソーの3音を同時に鳴らしても、ドミソの和音は聞こえてこないで、ドーか、ミーか、ソーのどれかだけが聞こえてきて、誰か一人の音が聞こえてくる。複数の声部が重なり合うことはなく、常にスイッチングしていく感じ。単音しか出ないモノシンセで和音を弾いてもどれか1音が出てくる感じ。この原理を利用して、各自でランダムに音を伸ばしても、不協和音にはならず、単旋律になる。各自が別々のコードを奏でても、同時にはならずに、次々に別の和音が登場する。この仕組みを活かした合奏のやり方があるなぁ。

 

ギターとウクレレマンドリンで同時演奏すると、こうしたスイッチングは行われずに、複数の声部が同時に聞こえてくる。撥弦楽器の重なり合いは、可能性がありそうだ。

 

こんな風にして、各自のZOOMのオーディオ設定を調整していくと、お互いの音がよく聞こえるようになる。これを、ZOOMのチューニングと呼ぶことにした。チューニングを終えた後に、みんなで声でハモってみた。声は雑音とみなされないので、声は複数声部がハモれる。

 

今日はこれで終わりと思ったら、急にJACSHA(日本相撲聞芸術作曲家協議会)のミーティング。いよいよ3週間後に、城崎国際アートセンターでのレジデンスが始まる。本当に楽しみなのだ。「オペラ双葉山 竹野の段」について、いろいろな話が飛び交う。