野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

湯浅譲二の実験

「四股1000」の102日目。「四股1000」ブログを次々に更新してくれる鶴見幸代(文章)と里村真理(手書きノート)に感謝。

 

8/5 四股1000 百日目 サガリバナさがり – 日本相撲聞芸術作曲家協議会 / JACSHA

 

今日の「四股1000」では、工藤あかねさんが湯浅譲二の「Voices Coming」にインスパイアされた喋りの即興。答えにくいことを尋ねられた時に、すぐ言葉にならないで、「やっぱり、あの、なんていうか」のような意味のない言葉を紡いでいく。ぼくの「だじゃれは言いません」にも通じる。街中で「だじゃれを言ってもらえますか?」と尋ねられて、なぜだじゃれを言わないかを答える人々のビデオに合わせてヴァイオリンを弾く曲。ヴァイオリンとヴィデオのための「だじゃれは言いません」は、以下の動画の7分すぎから11分あたりでみられます。

 

www.youtube.com

 

9月6日の北斎バンドのための新曲の作曲。7月の4つのオンラインワークショップのビデオ見て、作曲。1ヶ月経ってないのに結構忘れていて新鮮。2回目のワークショップでは、選んだ音階には、ミはなくてソはあったのに、どこでどう間違えたのか、最終的にできたメロディーには、ミは入っているがソは入っていない。まぁ、面白いメロディーになったからいいんだけど、後で見返すとびっくりするなー。

 

明日の朝11時より、「瓦の音楽」トーク&演奏のオンライン配信。アバンギルドを借りて行うことに。一週間前に行ったばかりで、不思議だ。

 

https://www.youtube.com/watch?v=JXMqTIzlNvM&feature=youtu.be

 

明後日は、「初代高砂浦五郎世界初演で、竹澤悦子さんのリハーサル動画を再度見直す。5年前の木ノ下裕一作詞、野村誠作曲「狸囃子」の竹澤さんの初演も凄かったけど、今度の「初代高砂浦五郎」は、相撲甚句、行司、呼び上げ、触太鼓のなき、能の謡、子ども古式土俵入りの掛け声、など、様々な相撲の声が入っている上に、浪曲のような語りまであるのだから、聞き応え満点。

 

一昨日のNadegata Instant Partyとのトークの感想文その3を書いた。

 

3 mixed美意識

 

Nadegata Instant Partyのことを、ミクストメディアとかマルチメディアという言葉で片付けないことだ。ミクストメディアで、いっぱいメディアがミックスしたとしても、一つの世界観に統一されたミクストメディア作品は、一方向を向いている。ナデガタのミクストメディアで、それぞれのメディアは一つのことを表現するための媒体ではない。あっちもこっちも向いている。

 

映像あり、絵画あり、インスタレーションあり、文章あり、音楽あり、という意味でのmixedだけではない。体験あり、ドラマあり、皮肉あり、感動あり、真面目あり、おふざけあり、マニアックあり、大衆性あり、理屈あり、デタラメあり、矛盾あり、口実あり、説明不能あり、というmixed美意識具合だ。

 

このmixed美意識であるから、人によって違ったところで引っかかる。しかし、その全部に引っかかる人は滅多にいないので、総括的に彼らのことを論じる人がなかなか現れない。逆に、その一面だけで彼らを論じることには気が引ける。だから、多くの人々を巻き込みまくっているのに、「あれは一体何だったのだろう?」という疑問に誰も答えを見つけないまま、元の生活に帰っていく。

 

Nadegata Instant Partyは、かなり独特で手強いから、ちょっとだけでも体験してみたのならば、「あれは一体何だったのだろう?」と考えてみるといい。そうすれば、あっという間に迷宮には迷い込めるはずだ。自分たちが疑問を持たずに信じていた何かの危うさが見えてくるかもしれない。だから、彼らについて語ることは、勇気がいることのようにも思うけど、そもそもmixed美意識なんだから、いろんな批評がありまくっていいはず。不完全なナデガタ論をインスタントに書いていくのだったら、誰でも参加資格があると思うので、ぼくも書いてるよー。

 

(つづく)