野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

大きくなあれトリエンナーレ

午前中に、鳥獣戯画で名高い高山寺にミニ遠足。川の水音を聞き、釈迦の足を見て、ふかふかの大地の上で四股を踏むのも良い。

 

午後は、2016年のJACSHAフォーラム「相撲道と作曲道2」のテープ起こしをする。「四股1000」で最近音読をしているので、この機会に音読するためのテープ起こしをしている。あらためて書き起こすと発見が多い。特に、邦夫さんに呼出し道について伺った時に、教わらないこと/教えないことで、結局、伝統が繋がっていると同時に多様化したり、各々の特質に最適な形になっていくところが面白いと思った。

 

夕方、NPO法人「芸術家とこどもたち」の理事会にオンライン参加。20年前に堤康彦さんが立ち上げたNPOで、あの当時、ぼくらは30代前半で理事になって理事会とかやっていて、当時理事会の帰り道にこれからぼくたち30代が色々やっていくことの意義とか語り合っていた。あの当時の理事という名前が似合わなかった若造だったぼくらが、みんな20歳年をとっている。懐かしく同窓会のような気持ちもあり、皆さんの近況を聞けて嬉しいと同時に、ぼくらが相変わらず理事していていいのかなぁ、それこそ、今の30代の人々が理事やった方がいいかもなぁ、とか思ったりするが、とにかく、懐かしい顔ぶれの人々と話す時間が愛おしく、今日は理事会での交流を楽しんだ。

 

能の「高砂」の最後の神舞の謡を昨日耳コピーしたので、今日は、大鼓と小鼓を耳コピーする。もちろん、いろんな流派や録音などで、微妙に違うが、耳コピーしながら、高砂の世界を自分なりに身体化する作業。

 

夜、竹澤悦子さんと打ち合わせ。新作「初代高砂浦五郎」に向けて、改めて声域の確認をしたり、地歌のことや和歌のことなど、いろいろ教えてもらう。一ノ矢さんの相撲道と、世阿弥の能の美学と、紀貫之の歌論が、地歌の世界と合体させていくことを考えている。打ち合わせの後、またテープ起こしに戻ると、一ノ矢さんが折口信夫の言葉を説明してくれて、

日本の芸能の特色は進歩するものではなくて、混合して大きくなっていくものだ

 と仰られ、相撲と能と和歌と地歌が、それ以外のいろいろなものもくっついて、どんどん混合して大きくなる、そんな曲を書きたい、と思った。