野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

香港を想う 相撲を聞く

香港のMOKさんから、野村が天安門事件のための祈りとして演奏したピアノを、公開したと連絡あり。こちらで聴けます。

 

soundcloud.com

 

今朝の「四股1000」。久しぶりに参加した佐久間さんがカエルカウントをしたり、初参加の潤さんやあゆちゃんが和みのカウントをしたり、相変わらず、発見がいっぱいある。

 

「初代高砂浦五郎」の作曲にとりかかっている。竹澤悦子さんの三味線弾き語り。元力士で高砂部屋マネージャーの一ノ矢さんのテキストが原作。江戸末期から明治初期の力士の物語。高砂を襲名する前は、高見山という四股名だった。一方、同じ姫路藩のお抱え力士だった相生は、誓約書を交わしたが裏切って、土佐のお抱えになる。これに高見山は怒り、一大騒動になったが、最後には、元姫路藩藩主(姫路県知事)が高見山を支援し、高砂の名前を与える。そんな話なのだが、ここで重要なのは、「高砂」とは能の「高砂」でも有名で、結婚式でも謡われる。そして、高砂神社にある「相生の松」というのは、「相老い」と掛けていて、おそらく「愛老い」とも掛けている。つまり、姫路の県知事は、怒る高見山高砂の名前を与えたことで、相生を許し、相生と終生仲良くすることの願いを込めたのではないか、と想像できる。だから、敢えて、相生と関係がある高砂四股名としてプレゼントしたのだ。

 

そんな感じで、一ノ矢さんのテキストの背後に見える意味を読み解きながら、作曲のスケジュールや、全体の構成などを考えていく。

 

1 プロローグ

2 姫路藩のお抱え力士

3 増位山の鞍替え

4 相生の鞍替え

5 相生vs高見山

6 高砂浦五郎襲名

7 エピローグ

 

こんな構成になり、1と7は同じ曲にして、3と4は同じ曲にして、5がクライマックスになるイメージで、歌詞を整えたり、調整したりする。

 

午後、香港のi-dArtの繋いでのセッション。爆発ピアノくんと、QQQの帽子ダンサーが登場。木琴と鉄琴で即興に応じてくれる。佐久間新さん、佐久間徹さん、里村真理さんとサ行の苗字の立会人たち。爆発ピアノくんも帽子ダンサーも、1年ぶりの再会なのに、本当に昨日会ったかのようでもあり、嬉しい再会のようでもある。そして、ZOOMでのリモート共演であることなど感じさせないくらい自然に反応する即興。本当に驚くべきほど、いつもどおり。里村さんが手ぬぐいを使って顔マジックショーをやったら、爆発ピアノくんはいつものようにずっこけた。元々は、ノリノリちゃんの口癖だった「レモン茶」は、他のメンバーにも伝染していて、今日は爆発ピアノくんが「レモン茶」を言い、佐久間さんも「レモン茶」と言い、レモン茶セッションが楽しく行われた。音楽の根っこを教えてくれるようなセッションだった。

 

夜、スコットランドのジェーンと豊橋の吉野さんと会議。本来は3月にやる予定だったプロジェクトのこと。色々な企画が延期になっているので、相変わらず、こうして企画会議で再調整が続いていて、それはそれで面白い。もう過去になっているはずのことが、まだ未来にある。時間は伸び縮みするので、実は、まだぼくたちは2020年の3月よりも以前にいて、でも、ぼくたちは2020年の6月にもいる。

 

 里村さんとJACSHAの次年度の企画会議。この「四股1000」という不思議な企画の意味や可能性を具体的に言語化していくのは、なかなか難しいが、でもなかなか面白い。でも、なかなか大変。でも、なかなかやりがいがある。そして、なかなか奥深い。