野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

天安門の祈り

今朝も「四股1000」。平安時代踏歌節会。現代でも熱田神宮などで踏歌神事として残っている。踏歌は、大陸から伝来した踏歌と大和にあった歌垣が合体したもの。つまり、輸入された外来音楽と、在来の音楽が融合したハイブリッドなもの。それが伝統化して、神事として残っている。今、ぼくたちがやっているものも、そんな感じかもしれない。

 

1989年6月4日に、天安門事件が起こった。その31周年の今日、香港のモックは天安門事件のメモリアルコンサートを企画したが、コロナウイルス を理由に、開催ができなくなってしまった。だから、インターネット上でのイベントを試みるとのことで、ぼくにも音源を送るように要請があった。6月4日、ぼくはピアノを録音して送ることにした。天安門での学生たちの希望と絶望のことを思い、そして、香港での人々のことを思い、即興でピアノを弾いた。そのためのガイドとして、「雨傘見聞録」という雨傘運動を描いたイラスト集を見ながら弾くことにした。里村さんに譜めくり(イラストめくり)をお願いして、演奏した。弾きながら、自分の中の言葉にならない複雑な気持ち、苦味のようなものが蠢く。それを、どうピアノで音にすることができるのか。そうやって弾いているうちに、本は最後のページに到達し、白紙になった。1989年の天安門事件や、2014年の雨傘運動を通り越して、2020年の今やまだ見えない未来を感じて弾いていたのかもしれない。未来は不安でしかないかもしれないが、でも、音楽には光も差してきたように感じた。10分間の音楽の出口がこんな風になるのだったら、このテイクをモックさんに送ろう。モックさんに、採れたての録音を加工せずに新鮮なまま送る。「天安門の祈り」

 

将棋の棋聖戦の挑戦者決定戦の中継を、Abema TVで見る。どちらも崩れずに均衡を保ち続ける難解な終盤で、素人には意味不明すぎる高度な将棋に感動する。いつまでもラリーが続くかと思ったところで、ギリギリのところで、形勢が一気に藤井七段に傾き、史上最年少のタイトル挑戦を決める。同じ愛知県から、このような若いスターが現れると嬉しい。将棋の世界は、こんな才能溢れる17歳に刺激を受けていて、羨ましい。作曲の世界にも、藤井七段のような天才的な十七歳がいるかもしれない。詩人上田假奈代は、早熟だったので、17歳で写真集に掲載されたり、才能が溢れていた。そんなどこかにいる早熟の17歳に、作曲の概念を覆されたい。

 

ながらの座・座の橋本敏子さんと電話で話す。今年の6月にやるつもりだったけれども、来年に延期になってしまった「徹家の音楽会」への思いや、今後の展望について。

 

問題行動マガジンが更新され、砂連尾さんの新しい絵がアップされたり、佐久間さんの新しい原稿やレシピがアップされた。ぼくも、近々、何かを書くぞーー。

 

mdkdm.net

 

明日、鈴木潤さんとの「音楽の根っこ 第5回」のライブ配信です。6月5日の18:30ー20:30。東京文化会館の杉山幸代さんをゲストに。

https://youtu.be/Lnji4nUPsfE