野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

in Cも作曲したい

今日で4月が終わる。一度も電車に乗らず、バスに乗らず、飛行機に乗らず、車に乗らずに1ヶ月を過ごした。こんなにゆとりのある1ヶ月を過ごしたのは初めて。仕事が全くなくなったが、逆に言えば、ゆっくり休めた。映画をたくさん見たし、本をたくさん読んだし、家事をたくさんした。贅沢な時間だった。片岡祐介さんが近年しばしば「純セレブ」と言う表現を使っている。詳しくは知らないので勝手に解釈すると、(おそらく)究極に暇で時間を持て余している状態のこと(らしい)。そう思うと、今月は、「純セレブ」的な生活が送れたのかもしれない。でも、ぬか漬けをやったりすることを「純セレブ」というのかぁ。段ボールで作ったスピーカーを、「純セレブスピーカー」と呼んでいるから、「セレブ」という言葉でイメージされるものと全然違う非常に観念的で批評的な言葉として使っているのだろう。

 

鴨川にて、三密を避けた4人のピクニック。マスクを付けて、オープンエアーで友人と語り合う。飛行機が飛ばない青空を見る。航空会社は本当に大変だと思うが、CO2排出量は減り、空気は少しきれいになったのかなぁ?飛行機が飛ばないが、トンビが優雅に飛んでいる。人間たちがステイホームしているのを、トンビは不思議に思っていることだろう。「あたまがトンビ」を作曲したのは、2004年のことだった。川の流れや大文字山比叡山を眺めて語る時間は、リラックスする。キウイの苗や野菜の苗も購入。

 

ホルストの「シャコンヌ」に基づく「ホルスト盆栽」を毎日8小節だけ作曲することにしたので、今日も8小節だけ作曲。家の野菜や植物が昨日よりも少し成長しているように、ぼくの曲も昨日よりも少しだけ成長している。そんなことを「朝顔作曲」と呼んだのは、1999年の「お年寄りとの共同作曲」で、音楽が少しずつ成長していくうちに、急激に変貌していった時だ(詳しくは、野村誠+大沢久子著「老人ホームに音楽がひびく」(晶文社)を参照してください)。

 

ZOOMでアンサンブルすると、音がずれる。そして、勝手に雑音と判断して音が消されたりする。この状況を前提にした曲を作曲したい。テリー・ライリーの「in C」という曲があるが、あの曲もZOOMでやったら、随分違う音楽に変換されるだろう。2020年にZOOMで共演するための「in C」を作曲するならば、どんな音楽になるのだろう?そんなことを考えていたら、新曲を書きたくなった。

 

ヒンデミットの伝記を読んでいるが、アメリカに亡命してイェール大学で教え始める。最初の教え子に、バーンスタインやルーカス・フォスがいるのだが、ルーカス・フォスの作曲作品を色々聴いたことはあったが、Improvisation Chamber Ensembleというのをやっていたことがあるようで、あれ、この作曲家、即興もやってたの?と驚く。そして、聴いてみると意外に面白い。

 

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「Polish Music since Szymanowski」の第2次世界大戦の章を読んだ。パヌフニクの「Tragic Overture」(1941)は、傑作だなぁ。改めて聴き直してみて、この作曲家すごいなぁ、と思った。

 

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今年生誕100年のDave Brubeckの伝記も読んでいる。ミヨーやシェーンベルクに教わったジャズピアニストの音楽に、ジャズファンからジャズじゃないと批判が出た時期もある。例えば、この曲なんて、バッハの音楽とジャズの間にあるような音楽だ。

 

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彼のお兄さんのハワード・ブルーベックも作曲家で、ミヨーの助手も務めたことも知らなかった。彼の「Dialogues for Jazz Combo and Orchestra」は、デイヴ・ブルーベック・カルテットとバーンスタイン指揮のニューヨークフィルで初演されている。1961年に、こうした試みをしていたのだ。

 

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今年2月に、野村誠を2時間番組で特集してくれたPolskie RadioのNokturnという番組の他の回をネットで聴いている。ポーランドトークは、ほとんど意味不明なのだが、ポーランド語の音が耳に楽しく、そして、曲がかかっても説明が意味不明なので、想像力が喚起されて楽しい。しばらくは、これを聴いて楽しもう。

 

Nokturn - Dwójka - polskieradio.pl

 

ちなみに、野村が特集された番組は、こちらで聴けますよー。

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