野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

いしいしんじ+野村誠+仕立て屋のサーカス

城崎国際アートセンターでの短期滞在も本日が最終日。せっかくなので、いしいしんじ+仕立て屋のサーカス+野村誠の4人で即興パフォーマンスを行うことに。スズキタカユキさんデザインの衣装で、仕立て屋のサーカスの舞台セットの中で、曽我大穂くんの音楽といしいさんの言葉の海の中を生きることができたのは、特別な、なんと形容したらいいのだろう、毒々しく澄んだ美しい時間でした。

 

アートセンターのスタッフの多くは、TPAMに行っていて不在。観客もごく数人だけがご招待。氷の上の国の物語が始まり、思わず金属質なドラを鳴らし始め、氷の国が溶けて小さくなるので新しい土地を探し求める下りで、ぼくは新しい土地を求めてステージから遠く離れて演奏し、大穂くんもバックステージにあるピアノに行き、この時点でいしいしんじさんの語りは聞き取れない外部へと出て、バラバラでありながら、また時々交差する。言葉が音楽に、音楽が言葉に影響されながら、光と影がうずうずして、布が絡まり、はためき、いつの間にか知らない世界にスリップしている。ここはどこで、ぼくは誰で、何をしているのだろう。気がつくと、ぼくは、「その場小説」をしていた。いしいしんじじゃないのに。でも、それは、「その場小説」ではなく、「その場小節」だった。音楽の「小節」はイギリス英語では、"bar"と言い、ぼくは、バーに小節を書いていた。この混沌とした貴重な体験。その余韻を味わいながら、城崎を発つ。ありがとう。