野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

勝手に企画会議 これからどうなるのプロジェクト第1弾

明日の「世界のしょうない音楽ワークショップ」で、野村の紹介として「越後獅子コンチェルト」から抜粋で演奏しようと思い、編曲作業。地歌の「越後獅子」の手事の3の部分に西洋楽器を加えた第3楽章をアレンジ。3年前、2年前に発表したバージョンとほぼ同じ形。

 

夜は、モノクロームサーカスの坂本公成くん、森裕子さんのお宅を訪問。夕食と楽しい会話の後、里村さんとの新プロジェクト「勝手に企画会議 これからどうなるのプロジェクト」(仮称)の第1弾を敢行。これは、押しかけ企画会議で、野村の過去の活動をプレゼンして、それを今後どう展開するかを一緒に考える会議。本日は、香港のQQQのプレゼンをするつもりが、里村さんと企画した「十和田のまちのピアノをめぐる小さなツアー」についての話に。

 

モノクロームサーカスは、個人宅を訪ねてパフォーマンスを出前し、そこで食事を振舞われる「出前パフォーマンス」を過去に300回ほど行っている。また、路上や商店街などで発表するダンス作品「収穫祭」も行っている。こうした野外のダンスは、90年代から、ずっとやっていて、「収穫祭」のダイジェスト映像を見せてもらう。タイや韓国や日本などで、日常の空間をダンスの舞台に変えてしまう試みの断片を垣間見て追体験できたのは、大変刺激的だった。劇場を借りて公演するお金がないから、路上で発表できるダンス作品をつくる。ダンサーのギャラを出せないから、なんとかできないかなぁ、と考えて、パフォーマンスを出前する代わりにご飯を振舞ってもらうことを考える。それは、貧乏人の工夫が生み出した芸術活動で、貧乏を逆用して生き延びる術を見つけていく。そんな中から、新しいダンスが生まれてくる。ぼくが路上に出たのも、そうだった。路上演奏を何百回と続ける中で、鍵盤ハーモニカの音楽を探求した。

 

モノクロームサーカスの2010年の「直島劇場」の写真や動画も見せてもらう。直島の村を丸ごと劇場にしてしまう作品。古民家の壁をぶち抜いて(grafとのコラボ)作った舞台。お客さんがみんなチケット代わりに風船を持っていて、それだけで風景が変わる。日没時の船着場でのダンス。こうやって当人たちの解説付きで見られると、本当に面白い。

 

「これからどうなるのプロジェクト」っていうからには、原発の話か?気候変動の話か?ポスト資本主義の話か?と、公成くんが問いただしてくるので、濃密な話になる。野村誠の音楽には、資本主義をぶっつぶす力があるので、資本主義を解体する音楽を展開するのだ、との結論に至る。しかし、そんなに簡単に資本主義をやめられるのならば、誰も苦労しない。資本主義を解体するダンスや音楽を、我々はできるのだろうか?一体、どうすればいいのだろうか?

 

いやいや。資本主義は、もう成立しない瀬戸際まで来ていて、もう崩壊間際のはずだ。下手すれば、明日にでも資本主義は終焉を迎えるかもしれない。だから、(香港で出会ったモックさんが言っていたように)ぼくたちは備えるべきなのだ。明日、大災害が起きるかもしれないし、起きないかもしれないけれども、いつか起きる。だから、備えなければいけない。同様に、資本主義の崩壊は、時間の問題で起こる。だから、その社会の変化に対応できるように、今から準備しなければいけない。儲けるとか、稼ぐとか、交換するとか、そういう価値観をいつでも捨てれるように。だいぶ、そういう癖がついているので、まずは、そういう癖をはずしていこう。

 

刺激をいっぱい受ける深夜までのトークだった。