野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

防音と断熱と香港とベートーヴェン

鍼灸に行き、体調を整えてもらう。

いろいろ書類の手続きなども行う。

里村さんと濃密な打ち合わせで、いろいろ新企画が浮上する。

 

ベートーヴェンについて作曲していたのだが、自宅の防音面で不備が多く、近隣にご迷惑をかけている自分に気づく。本当に申し訳ない。表現と迷惑は表裏一体で、その調整は常に生きていく上で課題になってくる。とりあえず、防音のために、家に手を入れると、断熱にもなって、家の密閉性があがり、防寒対策になる。そうしているうちに、香港の住宅街で、i-dArt知的障害者の施設JCRCでのアートプロジェクト)のメンバーとコンサートを行った時に、近隣の方が苦情を行って来られたことを思い出し、ベートーヴェンと、i-dArtのメンバーが、急に一本の線で繋がった。

 

i-dArtは、I do different artの略でもある。「障害者アート」と括られることに違和感を覚えて、different artと言っている。もし、「障害者アート」という言葉があるとするならば、難聴だったベートーヴェンの作品は、「障害者アート」と分類されるのかもしれない。障害と自由とベートーヴェンに関する音楽を、ぼくは書くのか、と思った。そして、表現と迷惑の表裏一体についても思った。問題行動のレッテルをはられた知的障害の人の表現のこと、社会の常識をぶち壊す問題行動作曲家のベートーヴェン。そう考えているうちに、新曲のタイトルは、「迷惑野郎の問題行動 ベートーヴェン250」となった。

 

近隣にピアノの音で迷惑をかけてしまったことに、心を痛めつつ、そのことに気づかせていただいたお陰で、香港の知的障害施設での経験とベートーヴェンを、結びつけることができた。お詫びと感謝である。昨日まで作曲した譜面に、これから香港の福祉施設での3ヶ月の滞在の記憶を書き込んでいこうと思う。ベートーヴェンと、i-dArtのメンバーの様々な共通点を見つけていこうと思う。そして、自由を渇望するベートーヴェンに、i-dArtのメンバーの表現をぶつけてみたい。

 

3月上旬には、また香港に行く。たくさんのベートーヴェンと再会できるのも楽しみだ。