野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

勝部の火祭り

昨年、十和田のピアノを巡るツアーをした。映像記録は、YouTubeで公開されていて、その後、個人的にこの体験を、「十和田十景」というピアノ曲集にした。10曲のピアノ曲から、どう展開するかで、「ワルシャワ十景」を作曲しようか、と漠然と考えていた。そこから、京都のピアノを巡るツアーの構想が浮かび上がり、その打ち合わせ。十和田のツアーを企画した里村さん、写真家だけど映像で関わろうという草本さん、新聞記者でテキストで関わろうという岡本さん。待ち合わせ場所は、Solというカフェ。東九条マダン実行委員長で、研究者でもあり朝鮮楽器奏者でもあるヤンソルさんのお店。

 

東九条マダン劇は、30年近く前に見たことがある。マダン劇は、韓国で60年代に若者たちが農村の古典仮面劇をリサーチし、それを民主化運動の現代劇として広場(マダン)で行ったもの。京都の東九条では、マダン劇が続いている。そのマダン劇の話だけでなく、ヤンソルさんとの濃密な話があって、打ち合わせはピアノの話というよりも、東九条の話、崇仁地区の話、マダン劇の話、在日コミュニティの話、様々な話に及ぶ。そのことが、ピアノのツアーと結びついてきそうな予感。

 

続いて、滋賀県守山市に行く。今日は、日本有数の奇祭と知られる勝部の火祭りを見に行きたい、と岡本さんから提案があった。実は、ぼくは30年近く前に、勝部の火祭りを見たことがある。守山市勝部町にあるスティーマーザールは、調律師の上野さんがピアノと音の実験場として1988年につくった私設ホール。1992年頃に、勝部の火祭りを題材にしたコンサートを企画し、野村も新曲を作曲する予定だったので、この火祭りを見にいった(企画は実現していない)。

 

せっかく勝部に行くので、まずはスティマーザールを訪れる。上野夫妻と語り合うのは楽しい。そして、ピアノについて、火祭りについて、様々な情報を教えていただく。スティマーザールのピアノは、本当に生きた楽器で、演奏しがいのある楽器。CD「ノムラノピアノ」も、ここで録音した。

 

そして、夜、ついに27年ぶりに勝部の火祭り。27年経っても、古い街並みは残っていて、大規模な祭りは縮小することなく行われていて、数多くの若者が裸にふんどし姿で、太鼓をかつぎ、巨大な5メートルもあるカリフラワーのような松明をかつぐ。そして、予想通り、様々な儀式ののち、点火するとあっと言う間に終わった。滋賀県は、本当に色々な奇祭がある。火祭りも多い。相撲神事もいろいろあるので、また、少しずつリサーチしていきたい。

 

ということで、火祭りに触発されて、ピアノツアー計画も面白い打ち合わせになった。そして、作曲に着手した「 Beethoven 250」も、火祭りや相撲など、ベートーヴェンが考えもしなかったものを、いっぱい盛り込んでいきたい、と思った。