野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

「土俵にあがる15の変奏曲」世界初演

そもそも、「ヴァイオリンリサイタル」に行くなどと言ったら、昔の野村を知る人は、野村誠も随分保守化したものだ、と思うに違いない。日本センチュリー交響楽団と仕事をしていると言ったら、昔は過激なことをいっぱいしていたけど、今は、オーケストラと仕事をするクラシックな作曲家になってしまった、と言われるかもしれない。

 

今日の「ヴァイオリンリサイタル」は、所謂「ヴァイオリンリサイタル」じゃなかった。ヴァイオリニストが裸足で登場するし、ヴァイオリンを弾かずに、行司の軍配のように構えるし、四股は踏むし、叫ぶし、観客が一斉に「よいしょ」と言うし、アイヌ語の音声が流れるし。

 

小川和代さんは、オーケストラでヴァイオリンを30年弾いてきたキャリアがあるにも関わらず、どうしてこんなに冒険する勇気があったのだろう。どうして、こんなにやり抜く気持ちが持てたのだろう。

 

保守的だと思い込んでいたオーケストラプレイヤー、しかもベテランのプレイヤーが、こんなに新しいことにチャレンジして、こんなに嬉しそうにしているのだから、ぼくも、もっともっと、新しいことにチャレンジしていきたいな、と勇気づけられた。

 

非常に気迫のこもった熱演だった。先祖の霊を成仏させてしまうような迫力の演奏だった。ぼくの新曲「土俵にあがる15の変奏曲」の世界初演、さらには、アンコールで「相撲聞序曲」がJACSHA編曲版でできて、作曲家としては、自分の作曲した曲が2曲も演奏されて、幸福な一夜だった。鶴見幸代の作品、樅山智子の作品にも、大いに刺激を受けて、また音楽を作りたくなった。

 

こんな月並みにありがとうとか言うのも、なんだかなぁ、と思うけど、やっぱり感謝。本当にありがとう。