野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

「27歳」が作詞/作曲される

鳥取から三重に移動。移動の車内で、John T. Lysaker著「BRIAN ENO'S Ambient 1: Music for Airports」(Oxford University Press)を読了。アンビエント音楽の先駆的な作品、ブライアン・イーノのMusic for Airportsに関する本。ポップスにおけるジョン・ケージとも言われるイーノは、美術大学出身で、ロックに現代美術の発想を持ち込んだとも言われる音楽家/プロデューサー。楽器が得意でないからこそ、非音楽家としての聞き方/音の感じ方をもって、音楽の創造にあたることができた。前衛音楽とロックの境界で、現代アートと音楽の境界を越えるイーノとアンビエント音楽について考えながら、12月にポーランドでのプロジェクトのことも考える。一緒にプロジェクトをするAlbert Karchは、日本のアンビエント音楽の先駆者である芦川聡の音楽に興味を抱いている。

 

三重大学でのアートマネジメント講座「アーティストから見たアートマネジメント」に出演。14:40-15:30「排除とインクルージョンと作曲とオーケストラについて」というレクチャーをして後、15:30-16:10「公共劇場こうなればいいな」激論を、三重大学の田中綾乃さん、演出家の多田淳之介さん、日本センチュリー交響楽団の柿塚拓真さん、三重県文化会館の松浦茂之さんと。40分という短い時間だが、あいちトリエンナーレについても少し話があった。16:20-17:50で野村のワークショップ。そのプロセスは、書いてしまうと大したことがないのだが、何にもないところから、参加者の人との会話から、立ち上がってきたものの延長から、メロディーのタネが立ち上がり、それがメロディーになり、そして、歌詞が生まれ、歌になり、ロケーションを探して、そこで歌うまで、90分間のドラマがあった。具体的には、多田さんのワークショップについて聞いて、多田さんのワークショップで「しりとり」から演劇になったとのことだったので、「しりとり」をして、その中に出てきた言葉の中に「ドレミファソラシ」の文字探す。「コアラ」の中にはラがあり、「どぶねずみ」の中にはドとミがあり、そうして、少し暗いメロディーのもとになる音列ができる。その音列から何拍子にするかを考えて、速いか遅いか決めて、3拍を均等なリズムに分割するか/不均等にするかを決め、不均等ならばどこが一番長く、どこが一番短いか決めて、メロディーを作る。「やさぐれる」をテーマに歌詞を考えて、1番から10番までの長大な歌ができ、ホールのロビーで演奏する場所を選び、階段に並んで、ぼくのピアノ伴奏で演奏。タイトルが「27歳」となった。やさぐれる歌を歌いながら、アートマネジメントや人生に様々な不満や課題もあるけれども、こうした歌を歌うことで、不思議とポジティブなエネルギーが溢れてきた。今日、やってよかった。

 

考えが違う人、センスの人、いろいろいる。いない方がいい人はいない。誰かが排除されるべきではないと思う。でも、避けなければならないのは、誰かを排除しようとする人が権力を握り誰かを排除すること。

 

ぼくの美意識として「アンチ排除」で、これからも芸術をしていきたい。社会包摂って表現でも悪くないけど、なんだかはっきりしないので、「排除しない」を前提に。しかし、なんでも混在すると、すぐに相性が悪くて、お互いが殺しあったりする。それを、調整して、お互いを生かし合っていくこと。それが、作曲家の仕事。全ての楽器の魅力を生かすようにオーケストレーションできるんだったら、社会のオーケストレーションができるはず。世界のオーケストレーションができるはず。排除せずに、どんなオーケストラができるのか。排除せずに、どんな世界ができるのか。それが、テーマ。