野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

お茶と音響と座禅のワークショップ『聴く・訊く・聞く』

2月、3月の佐久間新さんの「だんだんたんぼ」公演で舞台美術を担当された池上恵一さんが企画されたワークショップに参加。建仁寺塔頭両足院にて、お茶と音響と座禅のワークショップ『聴く・訊く・聞く』。

 

講師は、

お茶:中山福太朗(http://totousha.com/

音響:鶴林万平 (www.sonihouse.net/
坐禅:伊藤東凌 (https://ryosokuin.com

 

これは、作法を教えるワークショップなどでは決してなく、本質を体感するために、自分の感性を開いていくワークショップ。お茶のワークショップでは、最初はお茶ではなく、10円玉くらいのサイズの小さな花を相手の正面に置く、ということをした。人間はシンメトリーでもないし、どこが中心に置いたつもりでも、微妙にずれている感じがする。微妙に右にずらすと、もう少し左かなと思う。微妙に右かなと思う。決定的な場所が見つからず、ぼくはお花を少しだけ回転させて置いた。お茶で、器を回転して渡す意味が、少し体感できた。

 

鶴林さんは、ビル・エヴァンスから、エドガー・ヴァレーズから、アンビエントテクノからバッハまで、いろいろな音源は、彼の12面体のスピーカーで聴くと、音のうまみが感じられる。そして、両足院の環境音と混ざり合う。

 

座禅の前に歩行禅というのもやった。ゆっくり歩く。お寺の回廊を、ただただゆっくり歩くと、頭の中が次第に空っぽになって、気がつくと意識せずにゆっくり歩いていた。すっかり感覚が開いていき、疲れもとれる時間だった。呼吸が深くなった。

 

池上さん、鶴林さんに久々にお会いできて嬉しいし、佐久間新さんともお会いできた。

 

佐久間さんに会って、10月20日に千住でメメットと佐久間さんとレクチャーコンサートがあることを思い出す。帰ってからは、2014年のメメット作曲の「Senju2014」を編曲して、10月20日に上演できるように譜面を書いていく。半分以上は書き終える。

 

相変わらず移動が多く、スマホなど使っていないので、移動中に、ぼーっとしたり読書している。昨年、イギリスでアンドリューの家に泊まった時に、本棚で見つけて面白そうだから買ったJoseph N Straus著「Stravinsky's Late Music」を読了。初期のロシア民族主義の傑作バレエなどで有名なストラヴィンスキーだが、90歳近くまで生きて、晩年は若手の前衛手法を取り入れた12音主義になって、傑作とは思えない変な曲を書いている。例えば、「Movements」なんて、ストラヴィンスキーが書かなくってもいいんじゃないか、と思うくらい当時のヨーロッパの若手前衛作曲家に影響を受けている。彼の晩年の作曲方法を詳説してくれているので、いろいろ作曲の着想のヒントとして読ませてもらった。