野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

「旅とジャグリングの雑誌」PONTE

フランスのサーカスアーティストと、日本のサーカスアーティストのコラボ企画に関わっている。こういう日仏企画をやると思うが、フランスの文化予算は、日本の文化予算よりも圧倒的に大きく、アーティストが職業として成立しているし、芸術活動をする上での環境が、本当に整備されている。最近は、アジアの他の国に出かけて行っても、日本は貧乏な国なんだと痛感させられることが多い。ジャグラーが創作するための施設が充実し、ジャグラーが公演をするための劇場もフェスティバルも揃っている国のギヨームと、ジャグラーの居場所がほとんどないから国の渡邉尚くんのコラボ。でも、環境が整っていないからこそ、自分で切り開いていかねばならなく、そのこと自体が彼の生き方や表現を強くしている面もあると思う。

 

制作助手に入っている青木直哉さんは、「旅とジャグリングの雑誌」PONTEを自費出版して、配布/発信している。環境が整っていない国の人は、自力で小さな石を投げ続けて、自分たちの居場所をつくっていく。

 

PONTE | PONTEは旅とジャグリングの雑誌です。

 

サーカス芸人は旅人だ。渡邉尚くんは世界の各地を居候しながらジャグリングで旅をする。現代のサーカス芸人の生き方を模索している。フランスのサーカス芸人たちは、国に支援を受けることに成功し、サーカスのための施設や大学もつくり、国家プロジェクトとしてサーカスをし、独自の前衛的なサーカスを展開する基盤をつくった。この二つの立ち位置の人々が、妖怪をテーマに舞台作品をつくっている。路上の旅芸人のショーなのか、公的な文化活動なのか。今は、神奈川芸術劇場という公的機関の主催でクリエーション中。

 

この状況に音楽家として遭遇すると、いろいろなことを考える。「路上バンドに遭った日に神はドイツへ行ってしまった」と、25年前に詩人の吉増剛造さんがぼくたちのことを詩にしてくれた。吉増さんの石巻での「詩人の家」も今日が千秋楽。おつかれさま。