野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

Post Truth World

ヒューの家で目覚める。最低気温10度前後なので、明け方は寒い。9月5日は、ジョン・ケージの誕生日。今日は、生誕107年記念日。ちなみに、ヒューは、9月10日で生誕57年。

 

ヒューはブリストルの音楽教育と社会包摂に関する学会に出かけて行った。基調講演をするらしい。

 

ぼくの方は、本日はスティーヴと撮影。9月15日のコンサートに、野村は出演できないので、映像で出演すべく撮影をする。まずは、カフェに行って、スティーヴと打ち合わせ。昨夜、寝る前にヒューに見せてもらった動画「Post Truth World」が、とても良かったので、そのことをスティーヴに伝える。ヒューがスティーヴとつくった認知症の義母との会話をもとにつくった映像。認知症の人に対して療法的に音楽をするプロジェクトではなく、認知症の人との交流から学んだ認知症の人の感覚や世界観を作品化するところがユニークな試みだ。それをDementialand Song Cycleとして、作っていくつもりらしい。とりあえず、助成金などをとらずに、自分たちのプロジェクトとして開始している。最新作は、こちら、「Post Truth World」。

 

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そして、スティーヴと撮影。ヒューの家の音楽室のブラインダーから差し込む陽の光がとてもよく、ここで撮影しようと言う。ブラインダーの間から差し込む陽光のために、縞模様が鍵盤ハーモニカにできる。鍵盤ハーモニカの持つ角度を変えると、縞模様の向きが変わる。それに戯れる即興演奏を撮影。美しい音楽が立ち上がる。すると、今度は、全然違った感じの音を演奏しているのを撮りたいというので、ヒューの家にある楽器、ミニチュア箏、アンクルン(竹楽器)、声、ラッパ、本などを演奏し、次々に撮影。撮影しながら、スティーヴはどんどんアイディアが湧き出てきて、この映像にアガサ・クリスティの言葉を入れようとか、アガサ・クリスティの肖像を時々挿入するとか、言い出す。挙句の果てに、さっそく家に帰って編集を始めたいと言い、今晩、編集できた動画を持って来ると言って、帰って行った。

 

撮影があっさり終わってしまったので、ぼくは町に出かけて散歩した。迷子になるようにデタラメに道を歩いてみて、そのうち知った景色に出たらヒューの家に戻ることにしたのだが、残念ながら知った景色に出てしまったので、3時間で散歩は終わった。

 

夜、スティーヴはまだ映像を編集中らしく、ヒューに連れられてスティーヴの家に行く。スティーヴの家族とも久しぶりに再会。編集途中の映像は、とても面白い仕上がり。イギリスらしいユーモア溢れる。明日以降のワークショップについて打ち合わせをする。

 

先週のEnd of the Road Festivalで、ヒューのバンド「Natural Causes」がインスタント・ソングのワークショップをして、その場で次々に歌を作っては演奏したそうで、その録音を聞かせてもらう。Natural Causesがいるだけで、その場で作った歌でもアレンジされて、カッコいいライブ録音。こんな歌が次々できるのが、魔法のようで驚き。ヒューは、本当に天才だなぁ。1994年に出会ってから25年になるが、本当に良い友達だ。