野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

しょうぎ作曲ワークショップ

十和田市現代美術館にて、しょうぎ作曲のワークショップ。「しょうぎ作曲」を考案したのは1999年で、20年にもなる。それぞれが、違った価値観、違った背景、違った能力、違った音楽性を持っていて、それぞれが相手を尊重し合いながら、自分なりの立ち位置で他者と共存していくための共同作曲法として考えた。20年前に考えた時には、多様性とかインクルーシブとか言う言葉を聞くことはなかった。20年経って、世の中も少しずつ変わっている。

 

しょうぎ作曲は、共同作曲のメソッドでもあるので、考案者の野村なしに行われることもある。沖縄で鶴見幸代がしょうぎ作曲のワークショップをしたり、ギリシアでAlexis Porfiriadisがしょうぎ作曲をしたり、九州大学で長津結一郎がしょうぎ作曲をしたり、色々なところで、時々行われている。今日は、ぼく自身も参加して、しょうぎ作曲をした。

 

しょうぎ作曲では、作曲とは何か?、音楽とは何か?を定義しない。その代り、参加する人それぞれが、自分が音楽だと思うこと、自分が作曲だと思うことをする。もし、他の人が、それは音楽ではない、作曲ではない、と思ったとしても、その人が音楽だと思ったこと、作曲だと思ったことを尊重する。だから、それぞれが思う「音楽」や「作曲」にずれがあるかもしれないが、そのずれの集積としての「音楽」や「作曲」が立ち上がる。それは、誰か個人の価値観としての音楽や作曲ではない。

 

この中心のない「しょうぎ作曲」の魅力や面白さを、今日も体験することができて嬉しい。みなさん、ありがとう。