野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

展覧会をみる

東京オペラシティアートギャラリーにて、トム・サックス「ティーセレモニー」を見る。今度の日曜日で終わってしまう展覧会で、日本の茶道を模して、しかし似て非なるものを、見事なセンスで実現している。茶道の真似事みたいなアイディアって、誰でも思いつくが、茶道が洗練されまくっているので、中途半端にやると酷いものになりかねないが、彼自身の美的感覚と信念がしっかりしているので、単なるパロディーやユーモアを超えたものになっている。そんな展示だった。

 

収蔵品展もついでに見て、白髪一雄のアクションペインティングの作品が2点展示されていて、どちらも同じような手法(おそらくロープにぶら下がり、足で絵の具)で描かれているのに、二つの作品が全然違って驚いた。制作年を見ると、1961年と1972年。つまり、この人は一発芸としてアクションペインティングをしたのではなく、延々とこの方法で試行錯誤を続けて、足の使い方とか絵の具の使い方とかぶら下がり方とかを研究し続けて、変化し続けたのだ。そのことに感動してしまった。

 

原美術館の「自然国家」は、韓国と北朝鮮の国境の非武装地帯が、人間が入れないエリアであるからこそ、豊かな自然が残っているという。この国境と武力の間の危ないエリアに関わって、自然と人間の関係を見つめ直していくプロジェクトを、今後どう展開していくかを、数々のアーティストと科学者が提案している展覧会。こちらは、7月28日まで開催。

 

資生堂ギャラリーでの荒木悠展は、明治時代の文章(芥川龍之介、ピエール・ロティなど)を原作として、現在の風景と映像機材で映像化する展覧会。19世紀末の日本と21世紀前半の日本が重なり合うが、21世紀に生きる我々には、識別がつくので、その違いを味わえて面白いし、明治と今の距離を感じられる。この作品を22世紀の人が見たら、どう思うのかな、とも思った。きっと、鹿鳴館の舞踏会も、i-phoneも、過去の遺物。

 

東京の展覧会を満喫してのち、京都に戻る。