野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

「友へ」世界初演

本日、草柳和之さんにより、野村誠作曲「友へ」が世界初演され「合唱指揮者、金谷裕美子氏をしのぶ会」@聖書キリスト教会)、大変、好評だったそうだ。草柳さんは、DV問題に取り組むカウンセラーで、2001年に「DVのなくなる日のためのインテルメッツォ(間奏曲)」を委嘱して、それ以来、DV関連の講演やシンポジウムの会場で、野村作品を弾き続けている。その後、第2の委嘱作「DV撲滅ソングーDVカルタを歌にした」を歌い、様々な形で世界から暴力が消えていくことを訴えている。

 

「問題行動ショー」に向けてのピアノの練習の後、京都から東京に移動。移動の時間は自由時間で、スマートフォンなどを持っていないので、読書にあてられる。家にいる時は、乱読することができて、いろんな本を次々に少し読むのが楽しいが、移動中は荷物になるので、一冊だけ持って行く。若い人だと電子書籍になって、データで無限に本を持ち歩けるのかもしれないが、紙の本が好きなので、一冊だけになる。今日は、ポーランドの作曲家ルトスワフスキーの作曲技法について書かれている「The Music of Lutoslawski」を持って出た。半分くらいまで読んで、しばらく手にとっていなかった本で、久しぶりに続きを読む。今年の12月は、ポーランドをツアーすることを思い出す。ルトスワフスキーの音楽は、響きがとても美しく、その秘密は、彼の1オクターブの12音全てを数オクターブに分散させる12音和音にある。それは、12色の絵の具を混ぜたら、単に濁った灰色になりそうなのに、12色の絵の具を順番に配色して、見事な色彩を作り出すような感じだ。

 

そして、ルトスワフスキーも、作曲上の困難/問題にぶち当たり、「交響曲第3番」の作曲に着手して2年くらいして後、一度、中断してしまう。そして、その困難の解決の糸口を見つけたところで、今日の読書は終了。リゲティにしても、ピアノ協奏曲の1ページ目を書き始めてはボツにし、というのを延々と続けて、6年くらいかかって、やっと作曲にとりかかれたりしている。既に自身のスタイルも確立し名声もある巨匠が60歳くらいになって壁にぶち当たって、それを乗り越え、新たなチャレンジをしていく様子は、読んでいるだけでも、感動的で勇気をもらう。

 

Lutosławski - Preludes and Fugue for 13 solo Strings - YouTube