野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

愛知大学にて、あひる

本日は、愛知大学に授業に行く。愛知大学豊橋にある。吉野さつきさんが教えていて、彼女の授業に呼ばれている。午前中に、作曲家の樅山智子さんが授業したようで、スタジオ内に木の椅子がキャンパスの校舎の配置に並べてあり、そこにミニチュアキャンパスがあった。せっかくなので、午前の成果物を引き受けて、この配置を活かして午後の授業をすることに。

 

学生たちに、この空間を活かしつつ、楽器を自由に配置するように言うと、学生たちは、部屋のいろいろな場所に楽器を点在させて、不思議なインスタレーションが完成する。「照明の授業って、もう受けた?」と質問。せっかくだから、この楽器のインスタレーションに照明を当ててみよう。学生たちは、照明をあてる。舞台空間ができあがる。

 

この空間に学生たちが入っていって、楽器を鳴らす。ちょっとしたルールだけを定めて、各自の自由に委ねる。ルールは、シンプルだ。いつでも、この空間に入っていって、楽器を鳴らすことができる。ただし、定員3名。吉野さんが「あひる」と言ったら、全員が、この空間を横切って移動する。以上。

 

こんなシンプルなルールでやると、いろんな楽器の組み合わせ、いろいろな個性の組み合わせ、いろいろな空間の音の配置、いろいろな関係性などが生まれてくる。それは、音楽でありつつ演劇のようでもある。

 

途中で、野村作曲の「青少年のためのバリバリ管弦楽入門」の動画を見てもらって、いろいろ質問してもらう時間を設けた以外は、ずっとこのシンプルな空間音楽をやった。その中で、学生たちが試行錯誤して、耳を開いてコミュニケーションしているのは、時に美しく、時に笑いを誘い、時に意外性があった。

 

樅山さん、吉野さんと夕食の後、京都に戻る。行き帰りの新幹線の中で、Richard Steinitz著の「György Ligeti  Music of the Imagination」の最後の50ページほどを読み、読了。リゲティという作曲家が常に変化し続けてきたこと。なんでも素直に影響を受けて、アフリカ音楽、フラクタル理論、電子音楽クラシック音楽、その時、その時の新しいチャレンジがとてもよく伝わる面白い本で、いい刺激をもらった。こんな人だったら、会って見たかったな。

 

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