野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

変容の音楽、変容のダンス

佐久間新さんの新作舞踊公演「だんだんたんぼに夜明かしカエル」の最終リハーサル(@たんぽぽの家)。いよいよ、神戸のジーベックホールで2月17日に世界初演

 

マッサージをして身体の形を記憶して彫刻をつくったりする美術家の池上恵一さんが舞台美術を担当。その舞台セットが美しくセットされた稽古場。そこに、衣装の清川敦子さんの創作した不思議な衣装に着替えたキャストたち。ここに岩村原太さん、川島玲子さんのセンスの良い照明が加わると、時空がねじれて、日常が異世界に変容していく。

 

テーマがカエルだが、オタマジャクシからカエルに変身するように、この舞台作品では、人々、世界がいつの間にか変容していく。

 

音楽は、主に、ほんまなほさんと野村で演奏する。ジャワ・ガムラン、ピアノ、中国打楽器、台所用品、ペットボトルなどの楽器で、空間に音を解き放つ。音響のsonihouseが、手作りの12面体スピーカーを持ち込み、音響的に空間を変容させていく。

 

こうして立ち上がるシーンに対して、アドバイザーの砂連尾理さんが、「そこはもうちょっと‥」とかアドバイスすると、シーンが変容していく。オーストラリアから、この公演が観たくて飛んできたスティーブさんが、ビデオを撮っている姿もパフォーマンスのようだ。

 

多層的に、様々な表現が舞台で入り乱れる。凄く強度のある表現から、凄く繊細で微妙な表現まである。強度のある部分は、どうやっても大丈夫そうで、一方、繊細な部分は、本当に美しかったり、本当に心動かされるものなのだが、100人以上のそれぞれの観客席に届くように、音響だったり、照明だったりで、その繊細な表現をサポートしなければいけない。今日の大きな課題は、こうした繊細な表現のどこをどれだけピックアップするかだった。

 

とにかく、この公演、「ワビサビ」がいっぱいなので、その隠し味みたいな繊細な表現を、うまく活かせると、楽しさが倍増どころか、百倍くらい面白くなる。で、その繊細な表現を生かすために、野村が控えめにピアノを弾くのではなく、繊細な表現を生かすように、どれだけ力一杯ピアノを弾けるか、というのが、スリリングなところ。繊細でワビサビな表現に、思いっきり音楽をぶつけて、シーンを変容させる。カエルへの変身を後押しする。そんな役割を、今日は目一杯楽しんだ。

 

2月17日、佐久間新の50歳の集大成のダンスではない。ジャワ舞踊30年の集大成のダンスでもなく、たんぽぽの家での14年間の集大成でもない。これは、変容のダンス公演だ。佐久間新の新境地のダンスが登場するだろう。佐久間新が変身するだろう。佐久間新が化ける。化けるために、ぼくらは佐久間新を追い込む。窮地に追い込まれるのが大好物の佐久間新は、窮地に陥り、変身する。それがどんなダンスになるのか。見たことのないダンスになるだろう。

 

では、野村誠は変身できるのだろうか。自分の今までの殻を破って、どう変身したらいいのだろうか。キャストのみんなが、あんなに全力で体を探して、変身に向けてもがいている。ぼくも、変身したい。ぼくも、自分の可能性を信じて、自分の可能性を開くように、でも、無理をせずに、自然に演奏して、変身してみたい。自然に、普通に、ナチュラルに、無理をせず、カエルのように、素で、脱力し、全力で、空っぽになってみ、変身するのだ。変容の音楽が聞こえる耳になるのだ。全身が耳になり、全身で呼吸し、全身で受信するのだ。変身できるはずだ。17日は、今日のリハーサルと全く違う音楽家になろう。いや、演奏しながら、カエル音楽家に変身したい。違った体になれるように。明日は、昨年の香港の3ヶ月の体験を、もう一度振り返ってみようと思う。変身のヒントを見つけられるかもしれない。

 

さあ、いよいよ、あと3日。ああでもない、こうでもない、と言い合える貴重な時間、貴重な機会が、本当にありがたい。

 

最後に、宣伝!!

神戸公演は、既に満席近いですが、客席を増設できそうなので、まだ間に合います。お早めにご予約をどうぞ。東京公演(3月9日、10日)は、まだ大丈夫ですが、お早めにご予約を。 公演情報はこちら

 

www.diversity-in-the-arts.jp