野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ホセ・マセダのカセット100

横浜にやってきました。ホセ・マセダの「カセット100」が上演されるので、聴きにきました。90年代に京都で、2年前にマニラで、この曲を聴いているので、今回が3回目。

 

80歳のホセ・マセダと一緒にコンサートをやったのは、97年の京都。当時、20代だった野村のガムラン作品と、マセダの新曲が初演されたコンサートが2公演。そして、野村の鍵盤ハーモニカアンサンブルのP-ブロッで、野村誠、平石博一、エリオット・シャープなどの曲を演奏し、マセダの声と竹による「ウドロッ・ウドロッ」が法然院で演奏された。

 

ホセ・マセダとお茶をしたり、居酒屋でマセダが、「我々は、アジア音楽の新しい理論が必要だ」と力説していて、高橋悠治さんや中川真さんと議論したのも、20年以上前で、懐かしい。

 

90年代は、日本でマセダの音楽がよく演奏されて、その名残として、今では、日本の音楽教育の場に、トンガトンというフィリピンの竹楽器が使われたりする。

 

そんな昔話はいいとして、KAAT(=神奈川芸術劇場)のロビーで、公募で集まった100人でマセダの音楽が演奏されることは、嬉しいことだ。ラジカセで再生される音源もあれば、MP3プレイヤーで再生される音源もあった。田んぼでカエルの声を聴いているような体験に近い場面も何度もあった。「カセット100」を、日本のカエルにも聞かせてあげたいな、と思った。動物園で上演するのも面白いかもしれない。マセダの70年代の音楽は、決して過去のものではなく、今の音楽として生き続けると思う。

 

今回のTPAMで、マセダの「カセット100」や「5台ピアノのための音楽」が演奏されるのは、嬉しいが、フィリピンの竹の楽器を使う曲が聴けないのは、少し残念。また、誰か企画してほしい。そして、ぼくも機会があったら、5台ピアノのための音楽を、作曲してみたいな、と思ったら、1994年の「大温室」で、6台ピアノを使っていた。しかも、そのうちの5台のピアノは、全部、家庭で要らなくなったピアノを無料でもらってきて、そして、その5台をお客さんでほしい人に無料であげる、ということをしたのだった。その時の公演の映像を先月、いただいたのだった。アーカイブ、やんなきゃ!