野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

とーわだ、とわだ、ここーは、とわだ

 

十和田市現代美術館の10周年記念企画の「アートな旅」準備中。本日は、会場の候補地の一つであるひかり保育園を見学しました。教会が経営する保育園。ピアノだけでなく、リードオルガンがあります。このリードオルガン、なんとも味わい深く、いろいろなストップもあって音色も変えられて、これは、ツアーの目玉の一つになるだろう、と思いました。主任の先生や園長先生と打ち合わせをし、牧師さんの聖書のお話を保育園児たちが聞く場面なども見学。園児に伝わるように語る聖書のお話は、大人のぼくにとっても貴重なお話でした。

美術館で開催中の毛利悠子展「ただし抵抗はあるものとする」も鑑賞しました。線、螺旋、回転、動き、音、光、影、電気、信号。この作家が、「抵抗はある」というタイトルに、どれだけの意味を込めているのか分かりませんが、でも、そのタイトルは、ぼくに色々と考えさせました。特に、回転する機械が少しスムーズじゃなかったりして、それは意図されているノイズなのか、意図されていないノイズなのか分かりませんが、そうした時に出る摩擦音が、このダイナミックな作品の中で、微かな存在感を示していたことに、あ、確かに「抵抗はある」と、ぼくは心を惹かれました。それと、離れた展示会場に漏れ聞こえてくる毛利展の音が、何か不思議な想像力を掻き立ててくれ、その時は、「ただし抵抗はあるものとする」というタイトルとは全く違うイメージを掻き立てられました。そして、文字通り、摩擦が動きを生み出す作品もあって、人と人が出会う時には、そこには喜びもあるし、摩擦もある。その実際の喜びや摩擦に、どう折り合いをつけるかを、ぼくは十和田で出会う人々とやっていくのだろうと、擦れるスプーンを見ながら、その摩擦に敬意を表したいと思ったものでした。

美術館のスタッフの皆さんと夕食会で、色々、語り合い、十和田での二日目の夜がふけていきました。

ちなみに、一般家庭を巡る企画を思い出すと、1998年にパリで、坂本公成くんらモノクローム・サーカスのメンバーや林加奈さんと、様々な家庭を巡った「出前パフォーマンス」。2001年にロンドンでも、「しょうぎ作曲デリバリー」で様々なお宅などを訪問し共同作曲をやりました。また、2004年にフランスのリールでも、家庭を巡る「出前パフォーマンス」をしました。記憶が正しければ、2004年に向井山朋子さんが可児市で家庭のピアノを弾く企画があって、そこで野村の曲も弾きたいと連絡があったような。また、2006年の取手アートプロジェクトで、浦田琴恵さんの企画の「玄関コンサート」というのがあり、浦田さんと様々な家の玄関を舞台にして演奏する、という不思議なコンサートをやったりしました。今回の企画は、十和田市現代美術館から徒歩圏内で行ける場所にあるピアノを巡るツアーとして、構想しました。うーむ、楽しみです。