野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ベニと再会

イギリスのレスターのジョン・リチャーズの家で目覚める。朝9時過ぎに、ジョンがお茶だよ、と起こしに来てくれる。熟睡した。ジョンと朝食のトーストを食べながら、楽しく語り合う。

ジョンは大学に出勤。ぼくは、ベニとケルシーとの待ち合わせのカフェに行く。ベニは、8年前にホエールトーン・オペラのワークショップに参加した高校生だったが、今は音楽家

主に、ヴァイオリンを教えたり、子どものオーケストラの指導をしたりしていて、演奏する機会が少なくなっているらしい。音楽家ディーンの呼びかけで、ノーム・チョムスキーの80歳の誕生日(今年の12月7日)に、チョムスキーに誕生日プレゼントとして贈るための音楽コンピレーションのために、新曲を作曲中。

ケルシーはカリブの詩人の研究をしている。詩の話、音楽の話など、いろいろする。バーチャル・オーケストラというのをやっていて、凄く面白いというので、観に行ったら、昨日で終わって搬出中だった。会場で、オーケストラの中を移動すると、ヘッドフォンから聞こえるバランスが変化したり、コンサートマスターの位置に座ると、楽団員がコンサートマスターの方を見て演奏しているのが、バーチャルに体験できるそうだ。ケルシーがクラシック音楽に全く興味ない友人を連れて行ったら、面白いと言って、彼女が用事で帰った後も残って体験したそうだ。日によって演目も違ったらしいが、その日はホルストの「木星」とヴィバルディの「四季」の中の「秋」をやっていたらしい。ヴィバルディは管弦楽アレンジだったのかな?

http://www.philharmonia.co.uk/the_virtual_orchestra

彼らのお好みの中華麺の店でランチの後、二人の家を訪ねて、ピアノとヴァイオリンでセッションしたり、ベニの新曲を聞かせてもらったりする。Brad Mehldauという音楽家のJohn Boyという曲の譜面があって、初見で弾いてみる。いい曲で、ケルシーの好きなピアニストらしい。

ベニによると、一昨日、彼が実家に戻りお母さんに、「来年、ヒューが日本に行ってノムラと仕事する時に、自分も一緒に日本に行って、いろいろ学びたい」と言っていた時に、突然ぼくから、「今、ヒューの家にいる。レスターに行く。会えないか」と連絡があって、あまりにジャストなタイミングだったので、びっくりした、とのことだった。多分、ベニの念がぼくに届いたのだろう。その直前まで、ベニのことは忘れていたのに、急に、一昨日の晩、彼のことを思い出して、本当に急に連絡したのだから。

ジョンの家に戻り、今夜の夕食は味噌汁などをつくることになり、買い物に出かける。どうせならばレスターの違う店に連れて行きたいと、ジョンが、わざわざイスラム教徒の住むエリアの店に連れて行ってくれる。7拍子のアラブの音楽のBGMの店で買い物の後、夕食の準備。夕食の準備中に、娘のクララの所属するユース合唱団が作曲家に委嘱した新曲の録音を聴かせてもらう。合唱の伴奏が打楽器アンサンブルで、なかなかユニーク。

ジョン、サラ、そして長女のクララと次女のイーディの4人と夕食。クララは社交的でよく喋る。24年前にヨークで出会った頃は、ジョンもサラもぼくも20代だった。こうして再会して一緒に食卓を囲んでいるのが、夢のようだ。

食後、クララはフルートを練習している。モーツァルトプーランクが聞こえてくる。明日は、デモントフォート大学で講義をするので、少しだけ講義の準備をして後、就寝。