野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

キーボード・オーケストラの出現

香港のJCRCでの3ヶ月のレジデンス6週目に突入。

午前中は、町に出る。インドネシアに送らねばいけない郵便物を持って郵便局へ。何事もスピーディーな香港は、ここでもストレスなく、すぐに発送できる。i-dArtのショップに立ち寄る。今朝の幼稚園児へのワークショップは終了したと、写真を見せてもらう。

先週、里村さんと訪れた書店で紹介されたRooftop Instituteのムイさん、スイフォンさん、ジャミーさん(だったかな)の3人と会い、お互いの活動の紹介。ここは、アーティストが運営するスペース。トークやワークショップを主に企画し、展覧会などは行わない。地域を巻き込んだり、人々を巻き込む活動、つながりを作る活動は色々やる。スイフォンさんは、フィリピンで小山冴子さんと会ったそうで、世界は狭い。日本とのプロジェクトもやっている。楽しい意見交換の時間。

JCRCに戻り、午後は、「點心組曲」の第11楽章のビッグバンドの2回目。と思って、キーボードをセッティングしていると、第9楽章「ピアノとソファの間奏曲」のピアノ君がやって来て、ぼくと一緒にピアノを弾いた。昨日の午前のセッションができなかったのだけど、1週間後にこうして共演できて良かった。

さて、このビッグバンド。前回、アフリカンなノリだったので、今日もそんなつもりで始めるが、全然アフリカンな感じじゃない。サンバっぽいな、と思い、サンバ風のリズム感にすると、しっくりくる。なんだ、このグループは。とにかく、複雑なシンコペーションだったり、グルーヴする音楽が合うのだけれども、ジャンルはその時で違うっぽい。ここのセンターは、職員の人が、みんな楽器を演奏する。他のセンターでは、職員の人は演奏せずに、みんなに薦めたり、指導しようとしたりすることが多いのだが、ここの人はサポートもするけれども、自分自身が音楽を楽しんでいる。施設によって、その辺が違うな、と思う。

続いて、第12楽章の「キーボード・オーケストラ」の2回目。前回にキーボードがノリノリだった爆発ピアノ君は、今日もぼくが来るのを待ち構えていた。最初は、タンバリン・オーケストラも試してみたかったので、10のタンバリンを試す。すると、爆発ピアノ君が、タンバリンオーケストラを指揮し始めた。そう言えば、この12楽章は、当初「Daily Noise Symphony Orchestra」として企画したので、1回目に、混沌とした即興の中、ぼくは、結構指揮者のような動きをして、みんなの演奏を激励した。そうした動きが、2回目の彼に飛び火しているのが面白い。爆発ピアノ君は、そろそろピアノにしようよ、と目で合図を送ってきたので、キーボード・オーケストラに。今回は、合計5台のキーボードを用意し、机をロの字に並べて、キーボードを置く。やる人、そんなにいるのか、と思いきや、常に、5台のキーボードに最低1人、多いと3人くらいが演奏していて、常に10人くらいでキーボードが演奏される。演奏スタイルは、平手でデタラメ・クラスターだったり、一本指で弾いたり、人によって様々だが、結構、楽しそうで、40分以上続き、誰かが抜けても、すぐに他の誰かが来て、常に空席なし。限りなく混沌に近い電子音の渦で、ぼくが知っている音楽で連想されたものは、グレン・ブランカの音楽だった。混沌としていて、異様な高揚感。なんじゃこりゃ。

爆発ピアノ君は、キーボードの後片付けなどを、全部しっかり手伝ってくれた上に、施設の入口のところまで、見送りに来てくれて、さらに、しっかりとハグをしてくれた。相当、嬉しかったようだ。

第13楽章「音のレクチャー」の2回目。今日は、キッチンのボウルや鍋、さらに、スーツケース、ゴミ箱、プラスチックの箱などを持っていく。ボウルに水をはって叩くのが、まず、みんな楽しかったようで、そのうち、キッチン鍋のガムランみたいになってきて、凄いグルーヴの音楽になりました。7拍子のリズムをひたすら刻み続けるのにも、驚愕。