野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

i-dArtギャラリー

本日は、朝9時半から、昨日まで5日間ワークショップをしていた台湾ダンスチーム「台北市芸術統合教育研究会」によるシェアリング・セッション。昨日唯一視察に行かなかったE棟のホールで開催。特別支援学級の先生など、外部からの参加者も多く、40名ほどが参加。北京語も広東語も分からないので、ジョウイがぼくの横について、通訳してくれる。おかげで、彼らのプログラムが、かなり療法的な意図があって行われている、ということが分かった。ビニル袋を使ったワークショップは、車椅子の肢体不自由な方が、手の可動範囲をより広げられるために、とか、視線が同じ方向を向きがちな人が、視野を広げられるように、など。そうした意図があった上で考案されたプログラムだが、実際には喜びに満ちあふれた活動で、長い年月をかけて練り上げられてきたのだろう。話だけでなく、実際にワークショップの様子を映像で見ながらのレクチャーだったことも、よかった。近々、ぼくも、こうした講座的なことをするのだろう。雰囲気を見ておけて、非常に参考になった。

12時半になっても、相変わらず講座は続いているが、ジョウイとイェンに連れ出されて、別会場に移動。初めて市バスに乗り、初めてオクトパスを使う。山の向こう、トンネルの向こうの中心地に行く。大都会だ。こんな大都会の真ん中に、i-dArtは、ギャラリーを二つも構えている。ギャラリーに立ち寄る前に、麺をつるっと食べることにする。香港の人は、日本大好きだそうで、多くの人が何度も日本に旅行に行くのだそうです。イェンも、毎年のように日本に行き、1年に3回くらい旅行したこともあるそうで、京都でとった写真を次々に見せてくれたりする。次に日本に来たときは、案内してあげないと。彼女は、アマチュア吹奏楽で、クラリネットを吹いているそうです。ジョウイは、大学でカルチュラル・スタディーズの勉強したが、デザインもできるので、今年の1月にi-dArtのスタッフになって、主にデザインの仕事をしている。

昼食後、イェンが楽器屋さんに案内してくれる。中国古箏が売っているし、少し触らせてもらう。イェンが、うちに要らないのあるから、あなたにあげてもいいよ、と言われる。もらいたいが、日本にどうやって持ち帰ったらいいのだろう、と思う。五線ノートを一冊購入する。セブンイレブンで飲み物を購入する際にも、オクトパスで支払えるので、オクトパスで精算。便利だ。

ギャラリーへ。i-dArtは、福祉施設の入所者へのアートプログラムを行うだけでなく、そこで生み出されたアートを、町中の二つのギャラリーで発表し、グッズを販売し、さらには、そこで、施設外の人に向けたワークショップも開催している。そうすることで、閉ざされがちな福祉施設内での入所者との活動を、外部と結びつける仕組みを作ろうとしている。今日は、ここで、詩のワークショップがあるとのこと。詩人の方が来て、あと、子連れのお母さんとか、数名の人が次々に現れて、ワークショップが始まる。まず、ここはi-dArtと言って、福祉施設の入所者と行っているアートプロジェクトで生まれた作品を展示したり、様々な交流のイベントを行っています、というような説明をイェンがして、そのまま、ギャラリー内の作品を説明してまわる。その流れで、織物のようなことを、リボンをひもにからませて行う体験創作コーナーがあり、これをみんなでやったりする。また、使えなくなった車椅子の車輪に、リボンを巻き付けて作った作品が展示されている。こうした作品を見た後に、詩人の人の説明で、ワークショップがいよいよ始まる。2人組になり、それぞれが、自分にとって大切な誰かについてのエピソードを語る、というもの。上田假奈代の詩作のワークショップを思い出す。この後、詩を書くのか、と思いきや、紙皿に車輪のように毛糸が巡らされているものを渡され、ここに、今聞いた話を絡ませるように、テーブルにある糸を自由に絡ませて下さい、と指示される。それで、詩をやっているのか、編み物をしているのか、よく分からないまま手作業を続けると、その後に、中国語で書かれた詩が配られて、ある詩はお父さんのことを歌った詩、別の詩はお母さんのこと、という感じで渡される。それで、みんな詩を書いた後に、「文」という漢字の下は、斜めの線が二つクロスしているけれども、この漢字の語源は、「編む」ことから来ているそうです、というようなお話で終わり、最後に、自分たちの書いた詩やら、糸を絡めた紙皿を、壁に張り巡らされた糸に絡めるようにして展示して、終了。織物と詩作を絡めようとした意欲的なワークショップでした。ここのギャラリーでも、いつか、音楽会かワークショップか、何かはできそう。

ということで、イェンに少し案内してもらい、帰りは、少し町を歩いて、地下鉄(MRT)で帰ることにする。これで、バスも地下鉄も乗り方が分かったし、少し安心。ようやく到着後、48時間が経過した。家に帰り着くと、夕方7時。外気温は30℃。室内は、もっと蒸し暑い感じなので、エアコンのスイッチを入れ、しばらくは蒸しダコのようになっていた。