野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ミワモキホとアプポとグンとカマネの4楽章

本日も、「日本センチュリー交響楽団」との仕事です。家を出る前に、急にやらなくてもいい仕事がやりたくなって、「ウルトラセブン」の主題歌を、本日のワークショップに出席する楽団員で演奏できるようにアレンジする。家を出る一時間前に思い立ったので、アレンジというか、こったことも何もなく、ただただ、原曲に忠実に採譜して、本日の奏者にあてはめただけの譜面で、これは、演奏会で演奏されることもないし、ただ、今日のワークショップで聞いてみたいだけの欲求で、書きました。作曲家としての仕事ではありませんが、なんだか集まっている仲間が愛おしいので、こういうことをしてしまった。

その後、緑地公園まで出かけて、センチュリー・オーケストラハウスにて、まずは、取材。チェリスト北口大輔さんの8月23日のリサイタルに新曲を書くことに関する取材です。北口さんのコメントで興味深い話がいっぱいありました。オーケストラやっていると、指揮者が仮に棒を振るのは下手でも、こういう感じにしたいというイメージが、人物から滲み出ていれば、それを汲み取って演奏するようになる。ワークショップに参加している人々が実際に出している音だけでなく、その人がこんな音を鳴らしたいとイメージしている世界を感じることが醍醐味だった、と言う。このインタビューは大変面白かったので、こうしたトークをイベントとしてやっても良いのでは、という声もあがってきました。近々、実現させたいものです。

本日のワークショップは、今年度で5回目です。過去の4回は、結果的には、このような内容に。

1回目 ハーモニー(トーンチャイムを用いて、オリジナルなハーモニーつくる)
2回目 メロディー(レゴブロックを用いて、オリジナルなメロディーをつくる)
3回目 リズムとボーイング(弦楽器を用いて、オリジナルなリズムと弓づかいを考える)
4回目 変奏(ハイドンの主題などを題材に、様々な変奏をつくる)

そして、タイトルは、初回に生まれた「ミワモキホアプポグンカマネ」という言葉。本日は、チェロ協奏曲「ミワモキホアプポグンカマネ」が、どんな構成なのか、という大きな構造を考えるのが一番の目的でした。話し合いの結果、4楽章構成に。そして、グループに分かれてのディスカッションにより

第1楽章 ミワモキホ 

カプセルに入った不眠の薬。海底で眠るゴジラ。ゆっくりした曲で、柔らかく癒しの曲。水色のイメージ。

第2楽章 アプポ

アップテンポで、どんどん気持ちが上がる曲。ニ長調で、メロディーも上向きに始まる。

第3楽章 グン

筍の成長のような、元気がある短い楽章。多声的ではなく、ユニゾン中心。一拍子。群青色のイメージ。

第4楽章 カマネ

入魂の一発の音。釜の音も、マウスピースの音も、特殊奏法も、何があっても構わない。ひょっとすると、釜ヶ崎の音が何か入るのかもしれない。

という4楽章になることが決まりました。そして、日本センチュリー交響楽団のメンバーにより、前回のワークショップのアイディアをもとに、野村が書いた新曲の譜面も演奏されました。初見で演奏しても皆さん、素晴らしい音を出されるのです。この曲を発展させ、おそらく、第4楽章の「カマネ」に含まれると思われます。そして、その後、ボーイングについての説明やチェロの説明などもしていただき、最後に、もう一度、野村が書いてきた譜面をセンチュリー響の演奏家に演奏していただき、それに、ワークショップ参加者が即興で音を出す、ということをやりました。もともと自分たちが演奏した音楽が譜面になって発展してプロの演奏家に演奏されて、また、それに合わせて、即興で演奏する。ああ、こういうフィードバックは面白いなぁ、と思いました。

最後に、感想を言い合う時に、とんでもない発見がありました。サティの「ジムノペディ」とサン=サーンスの「白鳥」は似ているのです。「今日は大好きなジムノペディをチェロで弾いてもらって嬉しかったです」というコメントがあり、チェロで実演があったのは、「白鳥」だったのですが、そこで、この似てないような2曲が似ていることに、気づきました。第1楽章の「ミワモキホ」は、おそらく「白鳥」と「ジムノペディ」が交差することから始まる音楽になることでしょう。