野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

般若心経と四股とのセッション

豊橋にやって参りました。「門限ズの夏休みワークショップ」の第2回。本日は、「お寺で音楽ワークショップ」です。場所は西光寺。曹洞宗のお寺で、副住職の小原泰明さんと、門限ズ(=遠田誠+倉品淳子+野村誠吉野さつき)のセッションの時間を持とうというのです。

本日のプログラムの1番目は、「仏教と音楽」ということで、野村作品で仏教の悟りと作曲を重ねて作った「だるまさん作曲中」というピアノと管弦楽のための作品を、映像で見ました。指揮者の本名徹次さん、ピアニストの向井山朋子さんが舞台上にあがって、オーケストラのメンバーが客席から、だるまさんが転んだの遊びをしながら舞台に近づいて行く第1楽章。指揮者がふとんに寝転がり、寸劇が始まり、台詞の一部がオーケストラの楽器で奏でられる第2楽章。短い曲を書いてはボツにしていく作曲風景を描く実演付き寸劇の第3楽章。ピアノでの即興演奏風のカデンツァの第4楽章。そして、オーケストラとピアノが複雑に絡み合いながら響き合い、客席から手作り楽器50人も参加する第5楽章と進んでいく、25分ほどの作品。2001年作曲なので、15年前。ぼくが33歳になった頃の作品を懐かしく鑑賞。

参加者の中には、元力士で高砂部屋マネージャーの一ノ矢さんも、名古屋場所から駆けつけて下さり、相撲甚句の披露もあったり、豪華な内容。

第2部は、楽器の即興セッションで、「せーの」と「1234」を導入でやった後、声明の博士をイメージした「なんちゃって博士」ということで、紙の上に博士なのか、ネウマ譜なのか分からない不思議な曲線を書いてもらい、それを声でやってみるワークショップをやりました。

そして第3部が、いよいよ、お経とのセッション。声明とケンハモのデュオがその1。そして、その後、般若心経の読経に合わせての即興。一緒にお経を読みたい人は、お経を読む。そして、踊りたい人は踊り、楽器をやりたい人は楽器を、演劇をしたい人は演劇。各自にゆだねられますが、大切な誰かをイメージし、大切な何かをイメージして読むのです。ぼくは、ケンハモを吹いていました。遠田誠が踊っていますし、倉品淳子は台詞を即興で言っています。気がつくと、ワークショップの参加者も色々と始めていて、一ノ矢さんが四股を踏んでいました。吉野さんは四股に合わせて、音を出していました。木魚とお経と鍵盤ハーモニカの奏でる音楽に、四股は美しく調和して、こんな供養の仕方があってもいいのだなぁ、四股とは、そもそもトレーニングというよりも、鎮魂の所作であったに違いないと感じさせられるような美しき瞬間でした。

感謝。