野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ポンジョンの崖の上

朝から、次々に訪問者。プロジェクトに参加する唯一の女性トュティ(ダンサー)、ポル(ガムラン奏者)、シスワディ(ガムラン奏者)などなど。パシス(=シスワディさんの意)は、芸大のメディアアート科の副ディレクターをしているらしく、幸弘さんを映像アーティストと紹介したら、さっそく大学でレクチャーをしてくれ、ということになり、17日にやることに決まった。こんな調子で、次々予定が決まり始めるので、早いところ山奥にこもってしまわないと、大変なことになる。
で、車で、2時間以上、ジョグジャの郊外へ行く。舗装された道路を離れ、車一台がなんとか通れる砂利道を進み、岩がごつごつする道をガッタンガッタンいいながら、進み、こんなところにまだ人が住んでいるのか、と思うところを進んだ先にも、小さな集落があったりして、やぎの鳴き声が聞こえる。そんな山道を登りに登って、もうこれ以上行けない限界まで行ったところで、到着。標高700m。ポンジョンの一番上にある最後の民家につく。ここがぼくらの生活の拠点になる。
そこから、シンコンという芋の畑を抜けて200メートルほど歩いて行くと、芝生が突然途絶えて、ほぼ90度の絶壁、ポンジョンの崖に着く。落ちたら間違いなく死ぬ。100mほど真下に集落が見える。人が点のように見える。絶景。すごいパノラマ。とんでもない美しさと同時に、恐るべきほど音が面白い。崖の下の集落の生活の音が、ダイレクトに聞こえるし、せみの声、牛の声、やぎの声、イスラムアザーンが遥か遠方から聞こえてくるし、聴いたことのない鳥や虫の声が聞こえてくる。時間帯によって全く違う音がそこにある。ここで、今日踊ったり演奏したりせず、ただただ、この場所を体験することにしたい。今日は、何もしないことにする、とみんなに説明。
どうやら、今日からテントで寝るらしく、テントを建て始める。絶壁の崖の近くでは危険なので、少し奥まったところにテントをたてる。
インドネシアは入浴の変わりにマンディ(水浴び)をするが、マンディをする場所は、家の近くにはなく、随分、山を下り、湧き水のある野外でする。非常に細い月の月明かりのもと、みんなで裸になって水浴びをした。
アナンが、夕方バンコクからジョグジャに到着。ところが、この山道を夜登ってくるのは危険と判断し、明日来てもらうことにした。
ポンジョンの崖の上での合宿生活開始。テントで寝るのは、いつ以来だろう?星がいっぱい天の川もよく見える。